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バッター田中将大を堪能する。
交流戦のちょっと変わった楽しみ方。 

text by

中村計

中村計Kei Nakamura

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photograph byNIKKAN SPORTS

posted2010/05/17 12:00

バッター田中将大を堪能する。交流戦のちょっと変わった楽しみ方。<Number Web> photograph by NIKKAN SPORTS

 高校時代の田中将大は、マウンド上と同じくらい、打席での姿も魅力的だった。

「ミスター赤ヘル」こと、元広島の山本浩二のように両脇を二度、三度と軽くしぼりながらタイミングをとるのだが、その仕草がかっこよかった。

 田中は駒大苫小牧では主に5番を任されていた。ホームランも、少なくとも二桁は打っていると思う。そんな中でも、忘れられないのは3年生のとき、兵庫国体の準決勝、東洋大姫路戦で打ったホームランだ。

 ショートの頭上、数メートルを襲ったライナーが、そのままレフトスタンドに入ってしまった――印象としては本当にそんな感じだった。

 超高校級。そう表現しても決して言い過ぎではない打球だった。

 交流戦の密かな楽しみのひとつは、高校時代、そんな打者としても超一流だったパ・リーグの投手たちのバッティングが見られることである。

涌井秀章はホームラン・バッターだった!?

 15日の横浜対西武戦では、西武・涌井秀章が3安打4打点と大活躍。涌井は横浜高校時代、一時期、「投手失格」の烙印を押されてしまった時期があるのだが、そのときはクリーンアップを任され、やはりホームランをけっこう打っていた。ピッチャーに復帰したあとも、3年夏の甲子園では、7番打者ながら、1回戦の第一打席、報徳学園の片山博視(楽天)から左翼席へ放り込んでいる。

 同日、広島のエース、前田健太から中前打をマークした日本ハムのダルビッシュも、東北高校時代は打者としても鳴らしていた。前出の二人に比べると、若干バッティングに対する執着心を欠いていたものの、構えからは、その気になればいつでもスタンドに放り込んでしまいそうな臭いがプンプンとしていたものだ。

斎藤佑樹が語る田中将大の打者としての魅力。

 16日は、田中も阪神戦で魅せた。奇しくも、舞台は甲子園。

 ただ、フォームは高校時代の面影はほとんどなくなっていた。スタンスを大きくとり、極端に後ろ足に体重を乗せる構えは、どこか千葉ロッテのキム・テギュンを彷彿とさせた。

 しかし、フォームを改造しても結果を出してしまうあたりが非凡なところだ。6回表、貴重な追加点となる中前適時打を放った。

 そうそう、田中は高校時代、一発を打てる力を秘めながらも、こういうバッティングも実にうまかった。スコアリングポジションに走者を置いたときは、そうやって、しぶとくセンター前に転がすのだ。

 高校3年生の夏、名勝負を繰り広げた早実の斎藤佑樹(早大)も、当時、田中のことを「嫌(なバッター)ですよ。なかなか空振りしてくれないんで三振がとれない」と評していた。

 余談ながら、その斎藤は、15日の法政戦では大学で初となるホームランをマークしている。斎藤も高校時代は、コーチに「本気で(打撃に)取り組んだら、素質は斎藤がいちばん」と言わしめるほどのセンスを見せていた。

【次ページ】 剛速球を投じるピッチャーが打撃センスも高い理由。

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