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ランニングブームはなぜ広がったか?
買いたい人を増やすマーケティング術。
text by
葛山智子Tomoko Katsurayama
photograph byNanae Suzuki
posted2012/06/12 10:30
東京マラソンは2007年2月18日に初めて開催され、申込者は9万500人余。約3万人がフルマラソンと10キロコースに分かれて首都を走り抜けた。申込者は毎年増加し、今や3万5000人を超える参加枠に28万人を超える応募がある。
883万人。
何の競技人口かわかるだろうか。これは2010年のジョギング・ランニング人口(過去1年間に実施した人の数)の推計である。
笹川スポーツ財団の調査によると、2006年と比較して、ジョギング・ランニング人口は300万人近く増加しているという。読者の中にも、ジョギング・ランニングを行っている人も多いことだろう。
この競技人口の増加と共に成長したランニング関連ビジネスの代表格がランニングシューズである。株式会社矢野経済研究所の「スポーツシューズ市場に関する調査結果 2011」によると2010年のスポーツシューズ国内出荷市場規模(メーカー出荷ベース)は、数量ベースで対前年比101.1%、金額ベースで同101.0%であったのに対し、ランニングシューズだけをみると、数量ベースで対前年比110.7%の1714万足、金額ベースで同108.4%の464億8000万円となったようである。
2008年 | 2009年 | 2010年 | |
---|---|---|---|
ランニングシューズ | 14430 | 15480 | 17140 |
対前年比 | ― | 107.3% | 110.7% |
スポーツシューズ全体 | 76560 | 77170 | 78050 |
対前年比 | ― | 100.8% | 101.1% |
今回は、このランニングシューズ市場の成長をけん引した「売れる仕掛け」について考えながら、読者の会社の製品・サービスのマーケティングに役立ててもらいたいと思っている。
何を伝えれば、購入に結びつくのか。
さて、読者のみなさんが、製品・サービスを売るとき、まず何をお客様に伝えるだろうか。
筆者が担当している経営大学院の基礎クラスにおける議論の経験などからも、「差別化ポイントを伝える」と答える人が多いように思う。つまり、この商品がいかに優れていて、そして競合商品とはどの点において違うのかを説明するということだ。
確かに、マーケティング戦略の中では、商品やサービスの「差別化ポイント」を訴求することに重点が置かれる。ランニングシューズを持っている読者(多くの読者が1足は持っていると思う)も、各社のシューズの特性やフィット感を確かめながら選んだのではないだろうか。つまり、各社の差別化ポイントが効果的に読者の購買に影響しているということである。