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陸上界に“第二の室伏”誕生か!?
やり投げ・ディーン元気の爆発力。
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAkihiro Sugimoto/AFLO SPORT
posted2012/06/11 11:45
生まれ育ちは関西のディーン元気だが、父親のジョンさんの故郷はイギリス。ロンドン五輪出場は家族との約束でもあった。同じ投てき競技で五輪金メダリストの室伏広治が目標だという。「まだ及びませんが、次の五輪(リオデジャネイロ)では同じぐらいの実績を残したいですね」とコメントした。
「今年は自分の年にしてやるぞ、と思っていたのでうれしいですね」
ロンドン五輪代表選考のかかった陸上の日本選手権(6月8~10日・大阪)。
大会前から、ともに好記録を持つ第一人者と新鋭の対決が注目されたやり投げ。
期待通りのハイレベルの争いとなった勝負を制した20歳のディーン元気は、試合を終えると、いつもの快活な話しぶりで、素直に喜びを表した。
早稲田大学3年生のディーンは、今シーズン、急成長を遂げた。4月末の織田記念で、日本歴代2位の84m28で日本人最高位に。この記録は昨年の世界選手権でも銅メダルに相当する。さらに5月のゴールデングランプリ川崎でも81m43を投げて優勝し、日本選手権を迎えた。
対する32歳の村上幸史は、2009年の世界選手権銅メダル、昨年まで日本選手権12連覇という実績が物語るように、この種目の第一人者として活躍してきた。今シーズンは織田記念、川崎とディーンに敗れたが、織田記念の直前に右太ももの肉離れで、本来の出来になかったことが原因だった。
やり投げの第一人者・村上幸史と競り合い勝利したディーン。
それだけに、怪我から復調した今大会にかける意気込みは強かった。いつも以上に気合いの入った表情を見せる村上は、2投目で、大会記録を塗り替える82m93。続く3投目では83m95と記録を伸ばし、会場を沸かせる。これは自己記録を42cm上回るものでもあった。
だが、ディーンも黙ってはいなかった。4投目、村上よりも低い放物線を描いたやりは、80mを大きく超えていく。記録は84m03。
この記録が、ディーンの初優勝を決めることになった。
「村上さんがしっかり体調を戻してきて投げていたので、上回ることができて本当によかったと思います」
と言うディーンは、試合をこう振り返る。
「わりと振り回してしまい、やりがまっすぐになることが今日はなかったので、まだまだ課題はあると思います」
「3投目までは、どこかぎくしゃくしていました。でも4投目になって、意識的にではないですが、うまく集中することができました」
すべて満足がいく出来だったわけではない。それでも、これまでの大会で見せたように、「一発」を決めるのがディーンの魅力でもある。