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キャプテンでもレギュラー保証なし!
危機感募るスペイン代表カプデビラ。 

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中嶋亨

中嶋亨Toru Nakajima

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photograph byD.Nakashima/AFLO

posted2010/05/10 10:30

キャプテンでもレギュラー保証なし! 危機感募るスペイン代表カプデビラ。<Number Web> photograph by D.Nakashima/AFLO

いつも明治神宮のお守りを持って試合会場に行くというカプデビラ。この験担ぎは有名で、Jリーグにも興味を持つ親日家である

レアル・マドリーのアルベロアも好調をアピール。

 一方、フランス戦というビッグマッチでチャンスを得、及第点のプレーを披露したアルベロアも良い状態をキープしている。最終ラインに負傷者が続出しているレアル・マドリーにあって、左右両サイドの穴を埋めることができる彼は貴重な存在となっている。バルセロナとの首位争いを可能にしているレアル守備陣の安定は、アルベロアの注意深いポジショニングと1対1での粘り強さ抜きには語れない。昨季まで所属したリバプール時代よりも広いスペースをカバーすることを強いられるレアルにおいて、全く不安を感じさせないことが彼の守備力の高さを物語っている。

 それに加えて、右SBとして出場した第29節の対アトレティコ・マドリー戦ではシャビ・アロンソからのロングパスを受けると、絶妙のボールコントロールからペナルティエリア内にドリブルで侵入。そのまま逆転ゴールを叩き込んで見せた。このワンプレーは攻撃力に物足りなさがあると言われてきたアルベロアへの見方を変えるワンプレーだった。本人も自信を得たことは明確で、攻撃参加の際の出足の鋭さ、より積極的な判断が頻繁に見られるようになっている。

安定感のカプデビラと、“化ける可能性”のアルベロア。

 互いに譲らないアピールを続けるカプデビラとアルベロア。だが、左SBというポジションで見れば、シーズン終盤にかけてより存在感を発揮しているのはカプデビラではないだろうか。フランス戦後にデル・ボスケ監督は「サイド深く侵入する攻撃が少なかった」と語っているが、この試合で右SBとしてフル出場したセルヒオ・ラモスがゴールを決めているように、右サイドからの攻撃は頻繁に行われていた。一方、アルベロアの左サイドからはどうしても右利きのアルベロアからマイナスのクロスが放たれることがなく、サイド攻撃がフィニッシュに至らないという場面が多かった。

 スペインがワールドカップを戦う上で多く迎える状況は、守備を固めた相手陣内で試合を展開し、ペナルティエリア付近から攻撃を仕掛け続けるというものだろう。そこで重要になるのは、サイドで的確なフリーランニングを行って相手守備網を横に拡げられる選手、ワンチャンスを逃さないクロス、もしくはパスを放てる選手の存在だ。この仕事をユーロ2008で完ぺきにこなしたのはカプデビラである。アルベロアには対フランス戦でリベリーを完封し、バルセロナ戦でメッシを苦しめた守備力があるが、左サイドでの攻撃力はカプデビラが一歩リードしている。それでも、右サイドでの攻撃力の飛躍を見れば、アルベロアはいつでも“化ける可能性”を秘めている。

伯仲する左SB争いが終盤のリーガ戦線を盛り上げる。

 攻撃サッカー、パスサッカー、美しいサッカーを実践していると称賛されているスペイン代表にあって、より注目される機会が多いのは前線のビジャやトーレス、中盤のシャビ、イニエスタ、セスク、シルバ、シャビ・アロンソ、右SBセルヒオ・ラモス、CBコンビのプジョルとピケ、GKカシージャスらだ。

 だが、この代表の中では地味な扱いをされている左SBのポジションを巡っても、高いレベルでの戦いが繰り広げられている。残りわずかとなったリーガ戦線だが、スペイン代表の左SB争いに注目するのもスペインサッカーを面白く見ることにつながる一つの方法ではないだろうか。

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