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ドログバ、名誉挽回のラストチャンス。
チェルシー悲願のCL初制覇なるか!?
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byTakuya Sugiyama
posted2012/05/18 10:32
2008-09年の欧州CL準決勝バルセロナ戦で、PKをとらなかった主審に喰ってかかりイエローカードを出されてしまったディディエ・ドログバ。この年のチェルシーは、負けていないにもかかわらずアウェーゴール裁定で決勝進出を逃している。
チェルシーは、5月19日土曜日のミュンヘンで、4年ぶり2度目のCL決勝に挑む。クラブ史上初の偉業達成へのキーワードは、ずばり、「ディディエ・ドログバ」。1トップでの先発が予想されるベテランCFは、決勝進出の背景にある「原点回帰」の象徴だ。
今季のチェルシーは、プレミアリーグでは10年ぶり最低の6位に終わっている。3月に解雇されたアンドレ・ビラスボアス前監督の下で取り組んだ、攻撃的なポゼッション・サッカーへのスタイル変更が裏目に出てしまい、守備の不安定化が成績不振を招いた。
しかし、CL優勝がオーナーの悲願でもある欧州では、監督交代以前から内容よりも結果を重視するスタイルが復活した。強豪に化けた8年前から、チェルシーの代名詞でもあった「質実剛健」。カウンターの焦点として、ドログバの高さと強さが生きるスタイルだ。
グループステージ突破を懸けた昨年12月のバレンシア戦(3-0)、実質的には4-5-1ともいえる4-3-3システムで零封に成功したチームに、勝利をもたらしたのはドログバの2ゴール1アシストだった。
屈強な1トップは、初戦(1-3)を落として迎えた決勝トーナメント1回戦第2レグ(4-1)でも、ヘディングシュートで反撃の狼煙を上げ、弾道の低いクロスで逆転のベスト8入りを実現。バルセロナとの準決勝では、第1レグで“1チャンス”を物にした先制ゴールが、防戦一方の180分間(合計3-2)を戦い抜く勇気をチームに与えた。
プレミア最終節ではCL決勝を見越してベテランを温存。
そして、バイエルン・ミュンヘンとの決勝でも、厳しく守るスタイルが最善策となる。
現在のバイエルンが、果敢なプレッシングからカウンターを狙う相手を苦手とすることは、同スタイルを身上とするボルシア・ドルトムントに、国内で歯が立たない事実が物語る。チェルシーには、若いドルトムントと同等の運動量を期待することが難しいという見方はあるが、決勝で先発が見込まれるベテラン勢は、13日のプレミアリーグ最終節で1人も先発しておらず、エネルギー充電の機会を与えられている。
システムは、結果あるのみの暫定監督として、「攻守のバランス」を重視するロベルト・ディマッテオが基本に据えた4-2-3-1。2列目の3名はフォアチェックの意識を強める。素早く距離を詰め、敵が好む後方からのビルドアップを難航させることが、バイエルン封じの第1歩だ。トップ下のフアン・マタも、「個人的にはボールを持って攻めることに注力したいけど、今のチームでは効果も表れているし、守備にも汗を流すよ」と、覚悟はできているようだ。