詳説日本野球研究BACK NUMBER
未来の落合博満や野茂英雄のため、
プロ野球界は育成システムの強化を!
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/05/17 10:30
昨年まで和田毅がつけていたホークスのエースナンバー「21」を背負う千賀滉大。2度の1軍登板は自滅の形となったが、19歳右腕の可能性は首脳陣も認めている。
千賀滉大の才気溢れる投球から伝わってきたもの。
ここまでに書いたことを私は5月11日、ロッテ対ソフトバンク戦が行なわれているQVCマリンフィールドのバックネット裏で考えていた。選手のプレーを見ていなかったのではない。千賀滉大のピッチングを見ているうちに、そういう考えがどんどん湧いてきたのである。
千賀は先発しながら2回途中で降板している。成績は1回3分の0を投げて被安打3、与四球4、失点4と散々である。ゲーム終了後、秋山幸二監督から二軍降格を宣告され、出場選手登録を抹消されている。
しかし、私には素晴らしさばかりが印象に残った。打者の手元で伸びるストレートは最速149キロを計測し、縦に割れるスライダーは不必要な横ブレを排除し、打者の腰を折るようなキレ味で落ち込んでくる。そういう質のいいボールは、投球フォームがよくないと投げられない。
投げ始めから投げたボールが捕手のミットに収まるまでに要するタイムは、涌井秀章(西武)クラスのゆったり感で2.4秒ほど。じっくり体重を軸足にかけ、やはりゆったりとした体重移動でステップ幅も十分取って、オーバースローから投げ込んでくる。
若さゆえの荒さは目立つが、素材のよさはドラ1級。
1回裏、井口資仁の顔面近くを激しく襲う146キロを投げてヒヤッとさせたが、これは抜けたというより、意図的に“その近辺”を狙ったボールだろう。当てないで顔面近くに投げる程度のコントロールはフォームがいいので可能だと思う。
それでいて4四球を与えたのは若さのせいである。サブロー、角中、里崎智也はいずれも3ボール2ストライクのカウントから歩かせたもので、ノーコンではなく根負けと言ったほうが適切。また、根元俊一には148キロストレートを中前打、井口には130キロの縦割れスライダーを右中間安打され、これで投げる球がなくなったと思ってしまった。そのあとにサブロー、角中にフルカウントから連続四球を献上してピンチを広げてしまったが、もっと自信を持って投げることが千賀には必要だと思った。
選抜甲子園期間中、永山勝ソフトバンクスカウト部長から「今、千賀がアマチュアの選手なら、間違いなくドラフト1位で指名されますよ」と自信を持って言われたことを思い出す。それだけの素材のよさは確かに伝わってきた。一軍に復帰したときどんなピッチングをするのか今から本当に楽しみでならない。