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田中将大のリタイアで黄信号点滅!
東北楽天・塩見貴洋にかかる重圧。
text by
永田遼太郎Ryotaro Nagata
photograph byNIKKAN SPORTS
posted2012/05/01 10:30
今季2勝目となった4月24日の対オリックス戦での塩見貴洋投手。「前回(18日の対ロッテ戦)、ふがいないピッチングをしていたので、今日は気合を入れて投げました」と試合後に熱いコメントを残した。
「あいつ、初ですか? 遅いね」
今季初登板をプロ初完封で締めた東北楽天・塩見貴洋について、星野仙一監督は表情ひとつ変えることなくあえて厳しい言葉を口にした。
4月3日の対福岡ソフトバンク戦――。
昨年度日本一の打線を相手に塩見は、真向勝負を挑みチームの連敗を3でストップした。プロ2年目23歳、キャリアを考えれば「よくやった」と褒め称えられるのが一般的だろう。しかし、星野は違った。
ルーキーイヤーだった2011年から星野は、塩見に対し厳しい言葉をずっと投げ続けている。
2011年6月3日の対巨人戦で塩見は、6回途中3失点でゲームを作りルーキーとしては及第点ともいえる投球を見せた。しかし、星野は試合後にこう語る。
「いつもトータルでは良いけど、それでは勝てない。反省していない」
ここでも塩見を突き放した。
エースと同格の期待を寄せるからこそ感じる物足りなさ。
結果、星野の言ったとおりになった。
2011年の塩見は規定投球回数をクリアして防御率2.85の好成績を収めたが、二桁勝利にはあと一歩届かず9勝で終わっていた。
要因として投打の噛み合わせも、もちろんあるだろう。もしかしたら負けの半分も、勝ちに変わっていたはずの試合があったかもしれない。
最優秀新人賞は5勝22Sの埼玉西武・牧田和久に奪われ、自身は特別表彰の優秀新人賞に甘んじた。最優秀新人賞は記者投票により決められる賞なのだが、最優秀にならなかったという点で、見ているものに何かが欠ける印象を知らず知らずに与えていたという……そんな一年だったのかもしれない。
おそらく星野が求めているレベルも「新人だから……」とか「2年目だから……」とかそうした類のものではないのだろう。
星野は、塩見の今季初登板を開幕2戦目(対千葉ロッテ戦)にせず、開幕2カード目の頭として起用した。これは即ち、エース田中将大の2番手としての評価ではなく、同等同格の期待を寄せているということを示した形になる。