濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
ケージで勝てる日本人ファイターを!
長南亮が挑む“MMA虎の穴”に潜入。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byNorihiro Hashimoto
posted2012/04/08 08:01
2012年4月1日、練馬区に自らが代表を務めるジム、『TRIBE TOKYO M.M.A』をオープンさせた長南亮。UFCの舞台で戦うため、日本人としてはいち早く渡米し、カリフォルニアのジムで本場のMMAトレーニング方法を身に付けてきた。
仲間内の練習会に終わらない、勝つためのトレーニング。
そしてもう一つの目的が、“世界基準”での選手育成だ。
平日、ジムがオープンする前にプロ練習を開催。長南は“仕切り役”として選手それぞれに課題を与え、スパーリングの相手も指名していく。
もちろん日本でも、何人ものトップファイターたちが参加する合同練習会がさまざまなジムで行なわれている。ただし、それはあくまで選手の自主性に任されたもの。誰と寝技のスパーリングをし、誰に打撃を習い、どんな作戦で闘うかは選手自身と数名の仲間で考えるしかない。
従来の練習会では、集まったメンバーの中から相手を見つけ「次、お願いします」と申し合わせるスタイルが多かったが、『TRIBE TOKYO M.M.A』では体格やファイトスタイル、疲労の度合いに応じてその選手に必要な相手を長南が選ぶ。
日本格闘技界では画期的なヘッドコーチシステム。
アメリカのトップ選手は、各分野のスペシャリストがコーチにつくことが珍しくない。柔術、レスリング、ムエタイ、ボクシング、ストレングス&コンディショニング。さらにコーチ陣を束ね、練習方法や作戦を指導するヘッドコーチがつく。このヘッドコーチ役を、『TRIBE TOKYO M.M.A』では長南が担当することになる。
「まだ“趣味”の範囲。選手からお金は取りません」という長南だが、日本では画期的なシステムと言っていい。
先日もネット上で興味深いやりとりがあった。
ある重量級の選手が練習会への参加を申し出ると、長南はすぐに体格の合うスパーリング相手を探し始め、1時間もしないうちに見つけてみせたのだ。その手間に気を使った選手が「(わざわざ探してもらわなくても)できる範囲で練習に混ざります」と返信すると、長南は「そういうのは駄目」と釘を刺している。“できる範囲”の漫然とした練習は効果的ではないと諭したのだ。
日本の事情を考慮した、選手育成の総合施設を。
ジム開設にあたり、長南がこだわったのはウェイトトレーニング設備の充実だ。
練馬区に約60坪と格闘技ジムとしては都内最大級の広さを持つジムの約半分が、ウェイトトレーニングスペースにあてられている。これも日本の現状を考えてのこと。“○時から○○ジムで寝技、そこから移動して○○ジムでフィジカル”といった形で移動時間をロスすることを避けるためだ。
「日本では仕事をしながら格闘技をやってる選手も多いですから。できるだけ一カ所で練習できたほうが時間とお金の無駄が省ける」
アメリカ式の練習方法を取り入れながら、日本の事情にも配慮する。