濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
RENA、神村エリカを超えるか?
究極の“女子高生ファイター”魅津希。
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph bySusumu Nagao
posted2012/04/23 10:30
4月13日、「SHOOT BOXING2012~Road to S-cup~act.2」で魅津希(写真左)は未奈と対戦。「同じ条件で闘いたい」と未奈の計量オーバーによるペナルティのグローブハンデを拒否。その上で、3R1分1秒TKO勝利と圧倒的な実力を見せた。
RENAと神村エリカ、二人の若き女王が牽引する女子立ち技格闘技界に、新たなスター候補が登場した。4月13日、シュートボクシング後楽園ホール大会に出場した魅津希(みずき)である。
パンチの技巧に関しては、すでにトップレベル。ディフェンスとカウンターで観客を魅了することができる、稀有な選手だ。加えて総合格闘技にも参戦する幅の広さも併せ持つ。彼女なら、キック、総合、シュートボクシングの三冠も夢ではないだろう。いわば究極のオールラウンダーである。
20歳のRENA、19歳の神村に対し、魅津希は1994年生まれの17歳。その活躍ぶりは、女王たちの数年前と比較してもまったく遜色がない。
一昨年、総合格闘技イベント『JEWELS』の新人王トーナメント・ラフストーンGPを制すと、昨年はキックボクシングのJ-GIRLSでタイトル挑戦者決定トーナメントの決勝戦に進出。今年2月には、現シュートボクシング女子王者の高橋藍を下すビッグ・アップセットを成し遂げた。
試合会場の空気を一瞬で変えた、その圧倒的な技術。
そして今回、魅津希は『Girls S-cup』53.5kg級トーナメントにエントリー。一回戦で、昨年の『Girls S-cup』ベスト4の未奈と対戦した。未奈が前日計量で体重オーバーとなったものの、魅津希サイドの希望で試合は実現。
序盤こそ互角の攻防だったが、距離感を掴み始めてからは魅津希の独壇場だった。長いリーチを活かした未奈のワンツーをダッキングやヘッドスリップ、スウェーバックでかわし、カウンターのジャブ。
文字通り、未奈のパンチが“かすりもしない”様が続くうち、場内に“なんなんだこの子!?”あるいは“ここまで凄いとは”といったざわめきが充満し始めた。
淡々と試合に臨む、冷静な“女子高生ファイター”。
3ラウンド1分1秒、数えきれないほどのジャブを被弾した未奈が鼻からの出血とダメージによってレフェリーストップを宣せられると、ざわめきは大拍手に変わった。17歳の“女子高生ファイター”は、純粋に技術だけで観客の目と心を奪ったのだ。
「未奈選手がパンチでガンガンくるのは分かってました。ジャブが多かったのは、まずは前進を止めるため。相手は圧力があるので」
入場からリングを降りるまでまったく表情を変えなかった魅津希は、インタビュースペースでもすこぶる冷静に試合を振り返った。