Jリーグ観察記BACK NUMBER
存続の危機乗り越えた大分。
好調の理由を菊地直哉が語った!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2010/04/22 10:30
昨季から大分に加入した菊地直哉。今季はゲームキャプテンとして全試合にフル出場している
若手選手たちがチームプレーに目覚めた!
キム・ボギョンに刺激を受けるようにして、ユース出身の若手も覚醒しつつある。たとえば、同じ中学校(北九州市立若松中)出身のMF東(ひがし)慶悟とDF刀根(とね)亮輔。草津戦の同点弾は19歳の東がCKを蹴り、それを18歳の刀根が頭で決めた。得点後、刀根は「ずっと背中を追いかけてきた」という先輩に向ってまっしぐらに走り、抱きついた。
今の大分は、組織力も高まりつつある。
菊地は言う。
「第4節の栃木戦で、1対4でボロ負けしたんですよ。それまでは個の力で勝てていたんですけど、チームとしてプレーしなきゃ通用しないと思い知らされた。この敗戦がきっかけになって、試合でみんなが動くようになった」
「今は順位を考えず、とにかくいいサッカーをしたい」
しかし冒頭にも述べた通り、たとえ好調が続いたとしても、約15億円のマイナスを解消しない限り、J1に昇格することはできない。そういう経営上の問題は、選手のモチベーションにネガティブに作用しないのだろうか?
菊地は、きっぱりと否定した。
「経営問題は、選手は関われないこと。今は順位を考えず、とにかくいいサッカーをしたいというのがみんなの中にある。開幕戦前のロッカールームで、ボクはみんなにこう言いました。『もしかしたら今年自分たちはサッカーができなかったかもしれない。その喜びを胸にピッチに行こう』と。その気持ちを忘れず、観ていておもしろいサッカーを、もっともっと追求していきたいです」
昨年末、大分は負債が膨らみ、存続の危機に追い込まれた。Jリーグが支援を決めたあとも隠れた負債が発覚し、ぎりぎりまで存続できるかわからなかった。
J1と比べれば技術的なミスが多く、決して洗練されたサッカーではない。だが、間違いなく言えるのは、大分の試合からは「サッカーをできる喜び」が伝わってくるということだ。
J1が忘れてしまったかもしれない初々しい熱を、彼らは感じさせてくれる。