Jリーグ観察記BACK NUMBER
存続の危機乗り越えた大分。
好調の理由を菊地直哉が語った!
text by
木崎伸也Shinya Kizaki
photograph byMasahiro Ura
posted2010/04/22 10:30
昨季から大分に加入した菊地直哉。今季はゲームキャプテンとして全試合にフル出場している
経費削減――。
今季の大分トリニータにとって、それは勝ち点の獲得以上に大切な“義務”になっている。Jリーグから6億円の融資を受け、さらに債務超過が9億円を超え、6+9=15億円のマイナスを解消しなければ、たとえJ2で3位以内になっても、1部へ昇格することができないからだ。
ホテルのグレードは落ち、アウェイの移動も、J1時代とは比べ物にならないほどにハードになっている。
たとえば第7節の草津戦後は、前橋から羽田空港に2時間かけてバスで行き、空路で福岡空港へ。そして福岡空港から大分まで、再びバスで2時間。昨季ならばコストを惜しまず大分空港を使えたし、無理に移動せずに都内で1泊することもできた。
しかし、どうにもならない苦しい状況は、ときに反骨心を呼び覚ますきっかけになる。
J2得点ランキング1位のキム・ボギョンが大分を救う。
今、大分が絶好調だ。
第5節から3連勝して、2位にアップ。MF金崎夢生、DF森重真人、GK西川周作らレギュラークラスのほぼ全員が移籍したにもかかわらず、チームが一丸となって粘り強い戦いを見せている。
キャプテンの菊地直哉は、チームに大きな手応えを得ているひとりだ。
「確かにホテルのランクは落ちたかもしれないけど、フロントの人たちは本当によくやってくれている。あと、やっぱり2部に落ちて負け続けたら、悔しいじゃないですか。いい意味で開き直って、前向きにやれています」
さらに菊地は、ひとりのキーマンの存在をあげた。
「大きかったのが韓国代表MFのキム・ボギョンの加入ですね。ああいうレベルが高い若手が加入したことで、オレも負けてられるか、という気持ちがチームに充満し始めたんです」
今季、セレッソ大阪からレンタルで加入したキム・ボギョンは、大分にとって救世主的存在だ。この20歳のレフティーは、開幕の柏戦でデビュー弾。第7節時点で6ゴールを決め、J2の得点ランキングの単独トップに立っている。
菊地は続ける。
「キムはJ2の中で、ずば抜けている。ドリブルで倒れないし、反転がうまいし、何より得点力があるから相手を引きつけられる。そこからダイレクトにパスすれば、攻撃の起点にもなれるんです。いつまで大分にいるかわからない、それくらいレベルの高い選手ですよ」