詳説日本野球研究BACK NUMBER
センバツ出場校の見所を徹底解説。
2012年、遂に“白河の関越え”なるか!?
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byNIKKAN SPORTS/AFLO
posted2012/01/31 10:30
センバツ出場を決めて歓喜する花巻東の選手たち。エースの大谷翔平は「自分たちの代は岩手出身者だけ。岩手のために力を発揮して、日本一というカタチで岩手の方々に届けられれば」と野球による復興支援を誓った
好投手とチーム伝統ともいえる脚力を誇る愛工大名電。
愛工大名電は濱田の左腕と、チームの伝統と言ってもいい脚力で'05年以来の選抜制覇をめざす。
脚力は打者走者の各塁到達タイムで評価したい。俊足の基準は「一塁到達4.3秒未満、二塁到達8.3秒未満、三塁到達12.3秒未満」。1試合で何人がこの基準タイムをクリアしたのか、相手チームとの比較で見てみよう(11/23の関東一戦は未計測)。
11/25 愛工大名電 8-1 浦和学院 (5人8回/浦和学院2人3回)
11/26 愛工大名電 6-2 北照 (8人11回/北照2人2回)
11/27 愛工大名電 5-6 光星学院 (6人9回/光星学院2人2回)
相手チームとの違いは一目瞭然である。プロ・アマ問わず、1試合3人以上が全力疾走するチームは強い。それが愛工大名電は5人以上が全力で各塁を疾走し、相手ディフェンス陣にプレッシャーを与え続ける。北照戦の8人11回という記録は空前絶後と言ってもいい。
濱田の快投も見逃せない。昨年夏の愛知大会は4連投を経験し、秋の明治神宮大会は北照戦こそ最後の打者1人のところでマウンドを譲ったが、ほぼ全試合を投げ抜いた。
<34回3分の2、被安打31、奪三振40、与四死球14、自責点8、防御率2.08>
走者は出すが粘り強く押さえ込み、要所では三振を取る、という特徴が明治神宮大会の成績にはよく表れている。確認できたストレートの最速は145キロ、変化球は横変化のスライダー、カーブ、カットボールがある。
実績だけ見れば大谷、藤浪と同等のレベルだが、実戦重視の思想があるのか、ピッチングにスケールを求めず、北照戦のピンチの場面では7球すべてスライダー、カーブというシーンを見た。選抜ではスケールを追い求めるピッチングも見たい。
作新学院は昨年の甲子園出場選手のうち9人もメンバーが残る。
作新学院は、選手権に出場した旧チームのメンバーが9人残っている。付け加えると、投手・大谷樹弘、捕手・山下勇斗(2年)、二塁手・浅野壮也、遊撃手・石井一成、中堅手・鶴田剛也のセンターラインが、旧チームからのレギュラーである。
山下は二塁送球1.90秒の強肩を誇り、石井は守るのが楽しくて仕方がないという躍動感に溢れたフィールディングを見せ、浅野とのコンビネーションも万全、さらに鶴田は俊足を生かした広い守備範囲に特徴がある。
不安はエース大谷のピッチング。選手権1回戦の福井商戦でストレートが最速141キロを記録したように球は速いが、左肩の開きが早く、右打者の外角にボールが集中する傾向がある。この悪癖をこの半年間でどれだけ直すことができたか……作新学院上位進出のキーマンと言っても過言ではない。