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格闘技だって、Doスポーツだ!
“市民ファイター”の楽しみ方。 

text by

橋本宗洋

橋本宗洋Norihiro Hashimoto

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photograph byNorihiro Hashimoto

posted2012/01/30 12:10

格闘技だって、Doスポーツだ!“市民ファイター”の楽しみ方。<Number Web> photograph by Norihiro Hashimoto

女子MMA団体『JEWELS』開催の女子マッチに出場した内山由規さん(写真左)。彼女のように、カラダ作りのために格闘技をはじめる女性市民ファイターも増えつつある

 一口に格闘技といっても、ジャンルの幅や裾野は広い。一般に注目されるのはプロの「最強争い」や「ベルトの行方」、「ハイレベルな激闘」が中心だが、それらとは無縁の世界もある。MMA(総合格闘技)やキックボクシング、ブラジリアン柔術(BJJ)などを、あくまで趣味として習う、“Doスポーツ”としての格闘技も普及しているのだ。いわば市民ランナーならぬ“市民ファイター”の世界である。

 たとえば、1月21日に東京・浅草の台東区リバーサイドスポーツセンターで開催された『リバーサルBJJチャンピオンシップ』だ。BJJとはブラジリアン柔術のこと。MMAの基本技術として知られる柔術だが、単独の競技としても世界中に広まっている。

 もちろん、トップクラスはハードなアスリートの世界だ。この日、同時開催された『グラップリング・デスマッチトーナメント』では、プロでも活躍する選手たちが時間無制限、一本で決着がつくまでひたすら続く過酷な攻防を繰り広げていた。

“観客”のいない、終始和やかだった試合会場。

 しかし、すぐ横のマットでは白帯の試合も進行。仕切りの向こうでは出場者たちがウォーミングアップをする姿が見える。試合の合間には参加費の支払いを求めるアナウンス。

 この会場に、厳密な意味での“観客”は、おそらくいなかったはずだ。声援を飛ばし、ビデオを回しているのは指導者やジムの仲間、それに家族。後楽園ホールやさいたまスーパーアリーナで開催される大会とはまったく違う、のどかと言ってもいいような光景だ。プロのシビアさのかわりに、親密な空気が漂う。勝っても負けても笑顔を見せる選手が多いのも印象的だった。

 柔術は帯の色や体重、年齢で細かくカテゴリーが分かれており、出場者も幅広い。少年の面影を残す若い選手も、スーツが似合いそうな30代もいる。日本で暮らす外国人も参加していた。年代も職業もバラバラ。でも“柔術をやっている”という一点で、彼らは仲間だ。

格闘技ジムはダイエット目的から仲間作りの場へ。

 同じ会場で女子MMA団体『JEWELS』が開催した女子マッチにエントリーしていた内山由規さんは20歳の会社員。高校時代は柔道部に所属していたが「社会人になってから体重が7kgも増えちゃって」、ダイエット目的でキックボクササイズを始めた。

 同じ道場で柔術の存在を知り、半年前から週に3回のペースで練習を開始。高校時代と同じ体重に戻ったことよりも嬉しそうに語ってくれたのは「道場でたくさんの人に会える」喜びだった。

【次ページ】 “市民ファイター”たちが求める達成感。

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内山由規

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