詳説日本野球研究BACK NUMBER
日本一支えた“43勝投手”が流出も、
ソフトバンクの来季が明るい理由。
text by
小関順二Junji Koseki
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/12/16 10:30
2011年シーズンに16勝を挙げたエース和田毅も、海外FA権を行使してメジャーのボルティモア・オリオールズへと移籍することが決まった
将来を見越して育成と補強に投資した成果が現れる。
ソフトバンクの誇る左腕、和田毅と杉内俊哉が揃って主戦に立ったのは'03年。若くて安定感のあるエース級が2人いれば即戦力投手の補強にあくせくしなくてもよさそうだが、ソフトバンクは貪欲だった。
'03年 自由枠=馬原孝浩(九州共立大)
'06年 希望枠=大隣憲司(近畿大)
'07年 大・社ドラフト1巡=大場翔太(東洋大)
'08年 1巡=巽真悟(近大)
即戦力候補を多く獲っているといっても、野手の補強がおろそかになっているわけではない。やはり'03年以降の1巡指名を見ていこう。
'04年 1巡=江川智晃(宇治山田商・内野手)
'05年 大・社ドラフト希望枠=松田宣浩(亜細亜大・三塁手)
'05年 高校生ドラフト1巡=荒川雄太(日大高・捕手)
'06年 高校生ドラフト1巡=福田秀平(多摩大聖ヶ丘・遊撃手)
'09年 1巡=今宮健太(明豊・遊撃手)
'10年 1巡=山下斐紹(習志野・捕手)
分離ドラフトだった'05~'07年の3年間(ドラフト1巡が毎年2人)も含め、'03年以降ドラフト1巡(自由枠・希望枠)で12人を指名・獲得しているうち半分の6人が野手指名。これは中日と並んで両リーグで一番多い。
ソフトバンクのドラフト上位指名の特徴は、他球団にくらべ野手指名を重視し、投手は即戦力候補(その年のトップクラス)を主体に獲得を推し進めるというものである。野手は毎年逸材が出現するわけではないので、これはと思う選手が現れたら迷わずに指名、投手は育成より完成度の高い選手を獲るという戦略。育成と補強の好バランスこそソフトバンクの強さの秘密と言っていいだろう。
FAでの戦力流出を前提にしたチーム作りの難しさ。
FA(フリーエージェント)を導入して以来、野球は難しくなった。昔は有力新人を獲得すると「向こう10年、ショートは安泰」という表現をしたが、現在は活躍している選手ほど短期間でチームからいなくなる恐れがあるので、後釜が必要になる。そういう前提でチームを作っているのが最近ではソフトバンクと中日で、その2チームが'11年の日本シリーズを争ったというのは意味深長である。
ソフトバンク投手陣は来季、どういう構成になるのだろう。先発で実績があるのは攝津正と、FAで獲得予定の帆足和幸(西武)の2人だけ。盤石のリリーフ陣を擁していると言ってもさすがに苦しいように思える。