野球クロスロードBACK NUMBER
“ドラフト1位”を背負いし男たち――。
河原、中里、加藤のトライアウト2011。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byGenki Taguchi
posted2011/11/25 12:25
11月24日、ほっともっとフィールド神戸で行なわれた12球団合同トライアウト。参加者は投手37名、野手22名、合計59名という過去5年間で最多人数。開始前の説明をみな厳しい表情で聞いていた
11月24日。晩秋の陽光が降り注ぐ、ほっともっとフィールド神戸で12球団合同トライアウトが開催された。
参加選手は、過去5年間で最多の59名。それに比例するように、各球団の関係者、報道陣の数も例年に比べると多く、約1200人ものファンが三塁側スタンドを埋め尽くす。トライアウトの注目度が年々、高まってきていることの表れ、とも言える。
だが、グラウンドに集まった選手たちはチームから戦力外を言い渡された身である。いくら周囲から注目されているとはいえ、選手本人の認識はもとより、球団関係者の目が厳しいことも事実としてある。
「何もないです」とひと言だけ呟いた下柳剛をはじめ、杉山直久、桜井広大など言葉少なに会場を後にした前阪神の選手が代表するように、ほとんど全員が険しい表情を見せていた参加者たち。
「経験した人の話だと、『トライアウトで打っても、シーズンで結果を出していないと他球団から拾われるのは難しい』と聞いているので、今は何とも言えません」
レギュラー経験もある前西武の石井義人ですらこう語り、現実を冷静に受け止めようとしていたほどだ。
視察に訪れていたオリックスの岡田彰布監督の言葉が、現場をさらに厳しい雰囲気にさせていた。
「みんな戦力外やしなぁ……。なんか1コでも取り柄があればいいけど。まあ、俺なんかより編成の人間のほうがずっと観ているから相談はするけど、今は何ともなぁ」
とはいえ、この場でアピールできなければ新天地のユニフォームに袖を通すことはできない。だからこそ、プレーや言葉で自らの気概をとにかく前面に出そうとする。今年に関しては投手。特に、「ドラフト1位」(自由枠、希望枠含む)の看板を背負いながらプロの世界で生きてきた男たちに、そんな姿勢が顕著に見られた。
日本シリーズのマウンドで投げていた、河原純一の生きた球。
「他の選手に比べれば恵まれていました」
登板後、そう語ったのは前中日の河原純一(1994年巨人1位)だった。
巨人では先発から守護神まで任され、2005年にトレードで西武へ移籍。'07年に戦力外通告を受け、1年間の浪人生活を経て'09年、中日にテスト入団を果たした。以後、中継ぎとしてチーム投手陣の屋台骨を支えてきたが、10月下旬に再び戦力外に。それでも、「戦力ですよ」と落合博満監督が明言した通り、クライマックスシリーズと日本シリーズのマウンドに上がった。
これが彼にとってプラスとなる。