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プレミアで続くゴールラッシュは、
攻撃偏重と守備の劣化が原因? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2011/11/09 10:30

プレミアで続くゴールラッシュは、攻撃偏重と守備の劣化が原因?<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

チェルシー戦でハットトリックを決めるなど、ここまでリーグ11試合で11ゴールを記録したロビン・ファンペルシ。アーセナルの総ゴール23のほぼ半数を1人でたたき出している

チェルシーやアーセナルにも守備力劣化の兆候が。

 チェルシーでも、最終ラインで要となるジョン・テリーは、30代のベテランになる以前から機動力に乏しい。控えのブラニスラフ・イバノビッチにも同様の短所があり、コンビを組むダビド・ルイスにはカバーの意識が足りない。にもかかわらず、ラインを押し上げ、両SBも頻繁に攻撃に参加することで、純粋な守備要員はCB2名のみという局面が少なくないのだからリスクは高い。第10節アーセナル戦(3-5)では、そのリスクが現実となった。ハットトリックを決められたロビン・ファンペルシには、2度の1対1を許しているのだ。

 アーセナルにとって守備は以前からの泣き所だが、CBのトマス・ベルメーレン、バカリ・サニャとキーラン・ギブスの両SBと、レギュラー陣の出場が怪我で限られた序盤の拙守は目に余るものがある。第3節では、4バックの前後左右に生じた隙間をマンUに突かれて惨敗(2-8)した。格下のブラックバーンとの第5節でも、2度のオウンゴールを含む文字通りの自滅(3-4)。チェルシー戦でも、SBで先発したヨハン・ジュルーとアンドレ・サントスが繰り返し裏を取られて、チャンスを作り出された。新CBのペア・メルテザッカーは、敵のセットプレーの場面で、明らかに脅威となるテリーをターゲットとして認識することができずに失点を招いている。ファンペルシの決定力のおかげで、「拙守合戦」に敗れずに済んだようなものだ。

今冬の移籍市場の目玉になるのはディフェンス陣?

 チェルシー戦後のアーセン・ベンゲル監督は、「攻め勝った」というニュアンスを強調したが、内心では守備の改善を意識していないはずがない。今冬の移籍市場では、この夏にも興味を示した守備能力の確かなCB、ギャリー・ケーヒル(ボルトン)の獲得に本腰を入れるという噂も浮上している。

「積極姿勢で首位に立つマンCと同じく、我々も攻撃的サッカーの信奉者だ」と語ったビラスボアスにも同じことが言える。チームは、敵地でマンUを攻めながらも敗れた第5節(1-3)に始まり、アーセナル戦で既に3敗目。いかにオーナーが攻撃的スタイルを好むとはいえ、早々に優勝戦線から脱落すれば、34歳の新監督にチェルシーでの2年目はないだろう。

 指揮官が比較に持ち出したマンCには、ダブルボランチという4バックの盾がある。年内に控えているリバプール、マンC、トッテナムといった上位勢との対戦では、基本の4-3-3システムではなく、マンU戦の後半に機能した4-2-3-1で試合に臨む手もあるはずだ。

【次ページ】 プレミアのトレンドはふたたび「堅守」へ──。

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