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2強vs.反乱軍の放映権料争いに矛盾。
バルサとレアルの支配構造に変化は? 

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横井伸幸

横井伸幸Nobuyuki Yokoi

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photograph byMutsu Kawamori

posted2011/09/22 10:30

2強vs.反乱軍の放映権料争いに矛盾。バルサとレアルの支配構造に変化は?<Number Web> photograph by Mutsu Kawamori

UEFAによるリーグランキングでプレミアに次いで2位につけているリーガ・エスパニョーラ。テレビ放映権料の分配という大きな問題を、人気・実力のあるうちに処理しておかないと……

放映権料の差が勝敗を決めるという主張は正しいのか?

 ところで、反乱軍は「放映権料の然るべき分配による優勝争いの多様化とリーガ全体のレベルアップ」を錦の御旗としているが、果たしてこれは正しいのか。

 2強が受け取ってきた放映権料の推移と優勝の行方を振り返ってみよう。

 まず第1期。各クラブが初めて放映権契約を結んだ1996-1997から2003-2004シーズン。この間バルサやマドリー、デポルティボはリーガ最多の約1800万ユーロ(現在のレートで約19億円)、他のクラブは400万から900万ユーロ(約4億3000万円から9億6000万円)を得ていた。

 優勝したのはマドリー、バルサ、デポルティボ、バレンシア。しかし、上位争いには様々なクラブが顔を出していた。'97-'98はアスレティックが2位、レアル・ソシエダが3位に入った。'98-'99はマジョルカが3位、'99-'00にはサラゴサが4位と健闘した。'02-'03はレアル・ソシエダが快進撃を続け、あと1勝で21年ぶりのリーガ制覇というところまでいった。

 第2期はマドリーとバルサが年間約5500万ユーロ(約59億円)の契約を結んだ'04-'05から'06'-'07。3シーズンとも1位・2位の座は2強が占めているが、'04-'05を除いて3位以下とのポイント差はそれほど大きくない。'06-'07にはセビージャが3位となった。

 最後に第3期、2強が現在の契約──シーズン約140億円以上を結んだ後はどうか。'07-'08は前年も優勝したマドリーが2連覇を達成した。そしてグアルディオラが監督となった'08-'09以降はバルサの天下だ。

優勝の要因を収入額の多寡だけに求めるのは早計である。

 なるほど、一見、放映権収入額の多寡と優勝の可能性は比例しているように思える。

 だが、数字に表れない事情も考慮しなければならない。

 たとえば第1期、バルサは当時のガスパール会長が最悪の運営を行ない、クラブをぼろぼろにしていた。一方で、マジョルカやバレンシア、レアル・ソシエダは監督の選択が大当たりだった。所属選手との相性が最高だった。

 第2期、セビージャは中堅から成り上がり、リーガ3位の他、UEFAカップで2連覇を成し遂げたが、これはスポーツディレクターの完璧な仕事に因るところが大きい。

 さらにわかりやすいのが第3期のバルサだ。'07-'08は大金を懐に収めながら2位のビジャレアルに10ポイント差を付けられ3位に終わった。ロナウジーニョ時代の幕引きのタイミングを誤ったせいである。また、現在の強さの源がお金というよりはグアルディオラであり、カンテラであるのも明らかだ。

【次ページ】 確固たるビジョンを打ち出すことが優勝への近道だ。

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