プレミアリーグの時間BACK NUMBER
昨季CLベスト8の高揚感も雲散霧消。
主力残留も先行き不安なトッテナム。
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byAFLO
posted2011/09/16 10:30
プレミア第3節、マンCをホームに迎えたトッテナム。プレミア屈指の戦術家・レドナップ監督(最前列・中央左)にも1-5と大敗するチームを救う術はなかった
トッテナムが、昨季のCL準々決勝でレアル・マドリーをホームに迎えたのは、つい4月のこと。準決勝進出はならなかったが、グループステージではインテル、16強ではACミランを下して8強入りを果たしたチームを前に、ファンは『聖者の行進』ならぬ『スパーズの行進』を高らかに歌い上げた。
だが、それから5カ月足らずでホワイト・ハート・レーンの空気は一変した。高揚感は消え、停滞感どころか後退の危機感さえ漂っている。
8月28日、トッテナムの関係者とファンは、ホームでのリーグ初戦となったマンチェスターC戦(1-5)で、厳しい現実を目の当たりにした。敗戦のショックは、前週のマンチェスターU戦(0-3)を上回っていたに違いない。プレミアリーグ連覇を狙うマンUはまだしも、昨季までCL出場枠を競い合ったマンCとも戦力差が歴然だったからだ。昨季5位のトッテナムは、前線にセルヒオ・アグエロとサミル・ナスリを加えた昨季3位の攻撃に翻弄された。
モドリッチの移籍は消滅したが手薄な戦力は相変わらず。
トッテナムのプレーメイカーはルカ・モドリッチだが、攻撃のキーマンが「心ここに在らず」の状態では、主導権を握れなくても仕方がない。チェルシーからの誘いに、自らも移籍を志願していたMFは、試合前に出場辞退を嘆願していた。ハリー・レドナップ監督は、マンU戦では自身の裁量でモドリッチを遠征メンバーから外したが、ホームでのマンC戦では先発を強いた。しかし、結果は欠場も同然の存在感の薄さだった。
モドリッチが、後半20分すぎに伏目がちにピッチを去ると、ほどなくしてチームからは、前線の要人であるラファエル・ファンデルファールトも、ハムストリングの裂傷で消えた。ギャレス・ベイルの突破力のみが頼りとなった攻撃は、守備のオプションも豊富なマンCに難なく封じられている。
最終的にモドリッチのチェルシー入りは実現しなかった。レドナップは、「4000万ポンド(約50億円)と言えば相当な移籍金だが、売られなくて良かった」とコメントしたが、その数日前には「ルカの売却益を補強に当てた方が賢明かもしれない」ともこぼしており、心中は複雑だっただろう。