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去就が噂されるイチローと松井秀喜。
チーム内での立場はどうなってる?
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byKYODO
posted2011/09/19 08:01
11年連続200本安打に黄信号が灯るイチローだが、その一方で盗塁王の可能性が高くなってきているという嬉しい数字も。松井秀喜はGMのビリー・ビーンが残留に前向きという報道が出るなど、後半戦の好成績で良い雰囲気になりつつあるのだが……
“2013年のイチロー”に対するマリナーズの評価は……。
問題は、このジーターの契約がイチローにも波及するだろうということだ。昨季のジーターの打率とイチローの打率は非常に似通っている。しかもイチローの方が年齢はひとつ上。ジーターの契約を参考にするとしたら、年俸は10億円から15億円程度(球団の予算の違い)、契約年数は2年か3年。この内容で契約を結んだとしても、シアトルのメディアからは「払い過ぎだ」という論調が出るだろう。
マリナーズが大胆な戦略に出るとすれば、来季のシーズン途中でトレードに出す選択肢も考えられるが、保守的な球団だからそこまでの度胸はないと思う。
ひょっとしたら、今季のオフから契約延長の話が出ることも考えられるが、球団としては来季が始まってからのイチローの調子を見て判断していくに違いない。イチローとしては来季の前半戦にどれだけ数字の上で結果を残せるかが契約にも影響を及ぼすだろう。
アスレチックスは、なぜ松井秀喜をキープしているのか?
6月の時点では戦力外通告を受けてもおかしくない状態だった松井だが、夏場になって数字を整えてきた。
打率.263、出塁率は.335、長打率は.400(数字は9月13日時点のもの)といずれもメジャーに移籍してからワーストの数字だが、前半戦の不調を思えば、よくぞここまで盛り返してきたという印象がある。
9月になって、優勝から脱落した球団は若手に選手を切りかえているが、アスレチックスは松井を指名打者として起用し続けている。その理由は、メジャー独特の選手評価システムにあると考えられる。
メジャーリーグでは、選手たちは直近の2年間の成績に基づいてポジションごとに「タイプA」(上位20%)、「タイプB」(上位21~40%)とランク付けされる。
仮の話だが、松井が今季終了後にタイプBに分けられ、FAとなった松井が他の球団に移籍したとすると、どうなるか。
アスレチックスは松井を失った損失補てんの意味で、ドラフトの指名権(サプリメンタル・ドラフト)を得ることができるのだ。