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あと20年間は日本での五輪は無理!?
韓国・平昌の冬季五輪決定の余波。 

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生島淳

生島淳Jun Ikushima

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posted2011/07/11 10:30

あと20年間は日本での五輪は無理!?韓国・平昌の冬季五輪決定の余波。<Number Web> photograph by KYODO

2018年の冬季五輪が韓国・平昌(ピョンチャン)に決まった瞬間のイ・ミョンバク大統領とキム・ヨナ。キム・ヨナは今回の五輪招致活動に多大な貢献をしている

 2018年の冬季オリンピックの開催地が、韓国の平昌(ピョンチャン)に決まった。

 IOC総会が始まる前から、平昌が優位に立っていることは疑いがなかった。平昌は「2浪」のアドバンテージを持っていたからである。

 ここしばらく、オリンピック開催地の招致活動を見ていると、浪人した都市がノウハウを蓄積して有利に活動を展開している。特に夏のオリンピックでは、アテネ、北京と落選経験を持つ都市が、浪人のメリットを生かして開催都市に選ばれた。何が有利になるかというと……。

・知名度が初回の立候補の時より格段にアップしている
・招致計画が数年にわたって練られることになるので、「模範解答」に近いものができあがる
・招致委員会とIOC委員とのパイプが太くなっていく

 平昌の場合、招致計画が優れたものになっていった。特に、すべての競技会場間が30分以内で移動できるようになっているのだが、これは冬のオリンピックの移動距離に辟易している人間にとって、またとない朗報なのだ。

 とにかく移動で1日が終わってしまう経験を、取材陣や委員はしている。平昌はIOC委員の「ツボ」を抑えたと言っていいと思う。

国を上げ一気に莫大な資金を投入し、五輪招致に成功した韓国。

 さらに平昌はホテル、ジャンプ台やバイアスロン会場など、インフラ整備に日本円にして約1130億円をつぎ込んだ。

「作っちゃったんで、オリンピック、やらせてください!」という感じで、リスクもあり、強引な手法とも言えるが、これがまた「すでにインフラは整っている」という評価につながるのだから、結果的に平昌の招致委員会としては、してやったりとばかりに「ドヤ顔」をしたに違いない。

 それに加え、前回の招致活動との大きな違いとして、金妍児(キム・ヨナ)という金メダリストが誕生したのも大きかった。招致の「顔」ともいうべき選手の有無も、いまや大きい。少し前まではブレア(ロンドン)やプーチン(ソチ)といった国家元首のプレゼンテーションが大きな力を持っていたが、国際的な知名度を持つアスリートのプレゼン力も大切になってきた。

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