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リーグ首位と絶好調のチェルシー。
原動力は新指揮官の“いい人”ぶり!? 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2009/11/17 10:30

リーグ首位と絶好調のチェルシー。原動力は新指揮官の“いい人”ぶり!?<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

ミラン監督時代に2度CLを制したアンチェロッティ。チェルシーを初めてのCL優勝に導けるか

 テレビやラジオで巷の声を聞く限り、イングランドにはカルロ・アンチェロッティに「いい人そうだ」との好印象を抱いている人が多いようだ。その理由は、国民が無条件に好む「謙虚さ」を感じるからだろうか?

 チェルシーの新監督は、クラブレベルでは最高の勲章とされるCL優勝を、選手と監督として2度ずつ経験している実力者だが、同じイタリア人でイングランド代表を率いるファビオ・カペッロのような威圧感を周囲に与えることがない。5年前に、CL優勝監督として鳴物入りでチェルシーにやって来たジョゼ・モウリーニョ(現インテル)のように、ギラギラした感じもない。記者会見の席で、通訳の力を借りずに英語で質疑応答に努力する姿も、やはり「いい人」そのものだ。

 外から見た“アンチェロッティ観”は、あながち間違いではないと思われる。11月8日のマンチェスターU戦を前に、練習グラウンドで指揮官と談笑する姿が各紙に掲載されたミヒャエル・バラックは言っている。

「理由を言葉で説明するのは難しいが、誰もが監督を慕っている。人間というものは、相手を好きになるか嫌いになるかのどちらかだろう? カルロには人に好かれる何かがある」

 このアンチェロッティの「好かれっぷり」こそが、今季のチェルシーがプレミアリーグ優勝の最有力候補として評価を高めている最大の理由だ。

基本システムを変更するも、いまだ真価は発揮せず。

 もちろん、戦術面での変化もある。最たる例は基本システムの変更。チェルシーは、アンチェロッティ就任と共に、モウリーニョ時代からの4-3-3を捨て、新監督が古巣ミランで実績を残した中盤がダイアモンド型の4-4-2へと移行した。

 だが、開幕から3カ月足らずの時点では、新システム自体を新監督の功績と讃えることはできない。2トップの背後にあたるダイアモンドの頂点が、いまだに輝いていないからだ。初めに頂点を任されたフランク・ランパードは、5得点と調子を上げた10月の時点で本来の持ち場であるひとつ後列に戻されていた。後を受けたデコは、内容では押され気味だった先のマンU戦で、テンポの速さについていけずに消えていた。適役と思われるジョー・コールは、膝の怪我から復帰したばかりでフル稼働できていない。

【次ページ】 いつも不機嫌なアネルカさえ笑顔にさせる人心掌握術。

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