杉山茂樹のサッカー道場BACK NUMBER
ファンを軽視して岡田監督支持表明。
「チェンジ」できないサッカー協会。
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byToshiya Kondo
posted2010/02/21 08:00
スタンドがガラガラとなった2月6日の中国戦。首都圏の週末でのこの不人気ぶりは深刻だ
思いがけない展開だ。ベネズエラに引き分け、中国に引き分け、香港には3-0で勝利を収めたものの、ライバル韓国には1-3で完敗。この4連戦を機に、岡田ジャパンの評判がここまで落ちることになるとは誰が予想しただろうか。
あわてた日本サッカー協会は、すかさず岡田続投を宣言したが、これがどうも火に油を注いでしまったようだ。あるテレビ局が「日本代表を応援しますか?」のアンケートを採れば、「応援しない」が7割にも達した。
「岡田監督続投に反対ですか?」の質問に、7割が「反対です」と答えたのではない。それが、「応援しますか?」という「します」へ誘導するような問いかけへの答えであるところに、事態の深刻さがうかがえる。
他のいくつかのメディアが並行して行なったオーソドックスなアンケート「続投に賛成ですか? 反対ですか?」になると、反対は8割以上を占めている。
最近の鳩山政権の支持率どころではない。麻生政権の末期とほぼ同じだ。そこで大きな風が吹き「チェンジ」に発展した政治とは異なり、支持率20%の代表監督で本番に臨むことを宣言した日本サッカー。
岡田サンのみならず、「チェンジ」できないサッカー協会の体質にも、ファンは嫌気を催している。無力感だけが残るのか。さらなる騒動に発展していくのか。
1998年フランスW杯予選――ファンが今以上に熱かった時代。
思い出すのは、'98年フランスW杯予選。あのときは、ファンがいま今以上に熱かった。ある有名代表選手の高級車をボコボコにしたり、当時の加茂監督につばをかけたり、ファンは過激な行為にまで走った。
加茂サンから岡田サンへの監督交代劇を生む大きな原因のひとつだったことは間違いない。しかし、それは予選の最中の出来事だった。今回とは背景が違う。予選を比較的楽に通過したにもかかわらず、こうなってしまった理由はなぜか。
強い弱いを論じる前に、岡田サンのサッカーが、見ていて少しも面白くないからだと僕は思う。「チームには波がある。このチームも(良いサッカーが)それまではできていた」とは岡田サンのコメントだが、甘い自己分析だと言わざるをえない。
面白いサッカーのみならず、良いサッカーも拝んだ試しはない。エンターテインメント性の欠如はなはだしいサッカーを、岡田ジャパンはほぼ毎試合演じている。
たとえば、W杯アジア最終予選のバーレーン戦。あるテレビのインタビューで、岡田サンはこの一戦を良かった試合として自ら讃えていた。中村俊輔のラッキーなFKが決勝点となった試合だが、僕には、あの試合を良いサッカーだと胸を張る感覚がこれっぽっちも理解できない。
「僕がファンだったら金返せと叫びたくなる退屈きわまりない試合」
試合後、僕はノートにそう記しているが、これは趣味や好みの違いとか、そうした小さなレベルの話ではない。もっと根本的な、監督としての資質に関わる問題だ。岡田サンが庶民なら、あの試合に7000円も8000円も払うだろうか。