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マンU帝国の役目――“最強”でなければ何の魅力もない。 

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原田公樹

原田公樹Koki Harada

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posted2004/04/16 00:00

マンU帝国の役目――“最強”でなければ何の魅力もない。<Number Web> photograph by AFLO

 元気のなかったファーギーがこのところ生気を取り戻した。マンチェスター・ユナイテッドの鬼軍曹こと、アレックス・ファーガソン監督のことである。先日も得意げに「(3月20日の)トットナム戦の勝利を境にドン底から抜け出したんだと思う。プレーぶりはよかったし、(3-0という)結果も申し分なかった」とスランプから脱出したことを高らかに宣言した。

 このトットナムに快勝した翌週、リーグ戦で宿敵アーセナルと1-1で分け、さらにその翌週のFA(イングランド協会)カップ準決勝での再戦では、1-0で勝利して決勝進出を決定。その後のリーグ戦でもバーミンガム、レスターに連勝し、最近5試合は4勝1分けと好調なのだから、ご機嫌なのも無理はない。

 おまけに宿敵アーセナルがFAカップ敗退の3日後には、欧州チャンピオンズリーグ(CL)からも敗れ去ったことも、ファーギーの顔をほころばせる理由だろう。'98-'99年に打ち立てたリーグ戦、FAカップ、欧州CLの「3冠」の金字塔は堅く守られ、いかに困難な偉業だったかを改めて世に知らしめたのだから……。

 今季のマンUのつまずきは、センターバックのリオ・ファーディナンドがドーピング(禁止薬物使用)検査を受けなかったことで、8カ月間の出場停止を食らったことに尽きる。今季ファーディナンドが先発出場した全試合27戦で通算17失点しているので、1試合あたりの失点は「0.63」。これに対し不出場試合は21戦で通算28失点もしており、1試合あたりの失点は「1.33」と2倍以上なのだ。

 今年1月、ファーディナンドの長期出場停止が免れない状況になったときも、ファーギーは代役のセンターバックを獲得しようとしなかった。ケガ明けのブラウンと、左サイドバックのシルベストルをコンバートして、乗り切ろうとしたのだ。2人ともイージーミスが多いことは明白だったが、なぜかファーギーはギャンブルに出て、そして予想通り負けた。数試合は主将のロイ・キーンをセンターバックにコンバートしたが、余計に失点を重ねたことは、いうまでもない。

 悪いことは続いた。ファーギーとマンUの筆頭株主が競走馬「ロック・オブ・ジブラルタル」の400億円といわれる種付け料の分配を巡って対立。ファーギーはただで共同所有者になったにも関わらず、種付け料の分配を受け取る権利がある、と主張して譲らなかったのだ。サッカーの世界で稼ぐより、はるかに巨額のお金が転がり込むとあって、諦められなかったのだろう。一方、筆頭株主側は、過去の移籍交渉でファーギーが不正な金銭の授受に関与していた、と新聞にリークして個人攻撃に出る泥仕合。最後は和解したが、この騒動がマンUの士気に影響したのは当然だった。

 今年に入ってリーグ戦で最下位ウォルブス、ミドルズブラ、マンチェスター・シティに敗れ、欧州CLではポルト(ポルトガル)に散った。ようやく復調してリーグ3位を保持しているわけだが、優勝は首位を独走するアーセナルでほぼ決まり。

 ファーギーは「我々は優勝したいが、いまの状況では見込みがない。次のベストは2位で終わることだ」とセカンド狙いに照準を絞っている。現在2位のチェルシーには残り6試合で3ポイント差。十分にあり得る。

 しかし例え2位で終わっても、マンUに何の魅力もない。'98-'99年のような最強チームでなければ、マンUではないのだ。役回りを忘れてもらっては困る。ファーギーの弱気な姿や強欲ぶりなんて見たくないし、聞きたくない。泣く子も黙る鬼軍曹で、マンU帝国の独裁者でなければ、面白くない。

リオ・ファーディナンド
マンチェスター・ユナイテッド

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