Column from EnglandBACK NUMBER
UEFAカップという「有難迷惑」。
~レドナップ監督のしたたかさ~
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byJamie McDonald/Getty Images
posted2009/06/01 06:00
「ヨーロッパの大会」という言葉は、甘い響きを持っている。来シーズンは、マンUをはじめとする“ビッグ4”(他にリバプール、チェルシー、アーセナル)がイングランド勢によるCLタイトルの奪還を目指し、エバートン、アストンビラ、フルハムの3チームがUEFAカップ(ヨーロッパリーグに改名)に参戦することになった。
シーズン終盤に注目を集めたのは、UEFAカップの最後の一枠を巡る争いだった。本来、UEFAカップの枠は、プレミアの5位、6位チームとFAカップの勝者に与えられる。だが今シーズンは、FAカップの決勝がエバートン対チェルシーの組合せになったため、出場枠はプレミアの7位まで広げられていた。
UEFAカップへの出場権争いは……意外なほど醒めていた。
フルハム以下、トッテナム、ウェストハム、マンチェスター・シティの7位~10位グループは終盤まで接戦を展開。最終節でフルハムがトッテナムを振り切る形で、(結果は両チームとも完敗だったが)UEFAカップへの3枚目のチケットを手にしている。
だが優勝争いや残留争いにも劣らぬ、見応えのあるデッドヒートが演じられたわけでは決してなかった。実際のところ、チーム関係者は意外なほど醒めていた。
CLは別として、イングランドにおける“ヨーロッパ(UEFAカップ)熱”はきわめて低い。今シーズンの王者がシャフタルであることを知っているイングランド人が、どれだけいるだろうか? 決勝の延長戦でシャフタルを優勝に導くゴールを決めたブラジル人MFのジャジソンなど、“who?”の一言で片付けられてしまうのがおちだ。
もちろんイングランドの人々が、UEFAカップの権威を認めていた時代はある。60~70年代にかけては、イングランド勢が7度の優勝(前身のフェアーズ・カップ時代を含む)を記録。80年代には当時の新興勢力だったイプスイッチ(現2部)が優勝を果たし、他のクラブ関係者やサポーターも「後に続け」とばかり、ヨーロッパを目指す雰囲気があった。
ヨーロッパへ打って出るチームはなぜ減ったのか?
しかし状況は、92年に起きたCLの肥大と国内トップリーグの独立によって一変する。まずCL(以前はチャンピオンズカップ)の規模拡大により、UEFAカップには、CL参加資格のない「おこぼれの大会」というイメージが定着することになった。
これに輪をかけたのがプレミア創設だ。ブランド化されたリーグに巨大な資本が流入した結果、チームの力関係は年を経るごとに固定化が進み、CL出場権はビッグ4の「所有物」も同然となってしまった。