チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
ウイング兼ストライカーの時代。
~CL決勝にみる次世代トレンド~
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byKazuhito Yamada/KAZ Photography
posted2009/06/04 11:00
メッシとクリスティアーノ・ロナウド。
スターひしめくバルセロナとマンU両軍から、あえて一人特別な才能を持った選手を挙げよと言われれば、この2人になる。突然、そんなことを言い出す理由は、両者が決勝戦のピッチで、偶然にも同じポジションを務めたからだ。
メッシの従来のポジションは右ウイング。4-3-「3」の「3」の右になる。一方のC・ロナウドは、さまざまなポジションをこなしているが、基本はサイド。4-2-3-1の3の右でもっとも多く出場している。しかし、決勝戦のピッチには、互いにセンターフォワード(1トップ)として登場した。
なぜだろうか。
それぞれのチームで、最も守備力の弱い選手だから。少なくとも僕はそう考える。
大一番でメッシとロナウドをCFに起用した理由。
ボールを持てば誰よりもチームに貢献するが、相手ボールになれば誰よりもチームに貢献できない選手。そうした、ある意味での「問題児」を、両監督は守備の負担が最も少ないCFで起用した。両選手が対峙するそれぞれのCBが、決勝戦という大一番で、攻撃参加を仕掛けることはあり得ないからだ(闘莉王ではあるまいし)。もし両者をサイドで使えば、相手ボールの際に、そこはそのまま穴になる。ほころびが生まれる源になる。
舞台は欧州一を決める決勝戦。しかも90分一本勝負だ。
そこでサイドにあえて穴を作るのは、リスキーこの上ない。CFでの起用は、当然の選択と言うべきだろう。
勝利を掴んだバルサの「今日的」な戦術とは?
従来のメッシのポジションにはエトーが入った。逆サイドを張るのはアンリ。ウイングと言うべき4-3-「3」の「3」の両サイドに、CFタイプの選手を据えるバルサの攻撃陣が、僕の目には眩しく見えた。「これぞ今日的!」と言いたくなった。
センタリングを上げるだけのウインガーより、抜いてシュートがあるストライカーを張られたほうが、相手にとっては数段脅威になる。SBが上がれないばかりか、CBもそのカバーに追われることになる。
実際、決勝戦では、右ウイングで起用されたエトーが、ストライカーの本領を発揮し、バルサに先制ゴールをもたらしている。