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マウンドの国際化で常識が覆される!?
“日本式投法”に未来はあるか――。 

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鷲田康

鷲田康Yasushi Washida

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photograph byTamon Matsuzono

posted2011/06/28 10:30

マウンドの国際化で常識が覆される!?“日本式投法”に未来はあるか――。<Number Web> photograph by Tamon Matsuzono

中央大学時代には最速157kmをマークしたこともある澤村。高校以来、鍛え上げてきた強靭な下半身が剛速球を支えているが……

 巨人の澤村拓一投手は逆球が多い。

 逆球とはご存知のようにインコースを狙ったボールがアウトコースを突いたり、捕手が構えたところと逆にボールがいってしまうことをいう。もちろん投手にとっては危険な球となる。ただ、ボールに勢いがあったり、極端に逆に散ってくれれば、結果的には抑えてしまうことも多いので、何となく見逃されがちな悪癖でもあるわけだ。

 澤村は交流戦終了時までで3勝と勝ち星にこそ恵まれていないが、防御率は2.12、WHIPは1.17とルーキーながら一流の数字を残している。ただ、そうした数字に見過ごされがちだが、どうにも気になるのが、10球投げたら、ときには3、4球もある逆球の多さだった。

「あの投げ方だとどうしても逆球は多くなるんですよ」

 あるOB評論家の指摘だ。

斎藤も教科書通りの“日本式投法”だが、澤村同様に欠点がある。

 澤村は日本では理想的な投げ方の投手の一人かもしれない。

 軸足にしっかりと体重を乗せて、低く、長くステップして、下半身で粘って投げる。

 本格派投手として、教科書通りのピッチングスタイルというわけだ。

「あの投げ方は、踏み出した足でしっかりと体重を受け止めて、下半身に溜まったパワーをはねあげてボールに伝えるという動きになる。その代わり疲れてきたり、上半身と下半身のバランスが崩れると、下が止まって腕だけが振れるので、ボールが引っかかって逆球が多くなってしまうわけです」

 実は日本ハムの斎藤佑樹投手にも、同じような兆候があるという。

 斎藤の最大の特長は、ボールが低めにいくことだと言われているが、これも下半身で粘る投げ方なのに下の動きが止まってしまうことが一因ともなっている。

 斎藤は左肩の開きも早い。普通ならボールが抜けるところが、下の動きが止まることで指に引っかかって、低めにいく。

「ただ、下半身のパワーを伝え切れないので、ボールに力はない」

 その評論家の説明だった。

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