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'06-'07CLベストイレブン(後半) 

text by

杉山茂樹

杉山茂樹Shigeki Sugiyama

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photograph byTomohiko Suzui

posted2007/06/27 00:00

'06-'07CLベストイレブン(後半)<Number Web> photograph by Tomohiko Suzui

 僕が選ぶ「今季のCLベスト11」の後編は、MF、FW部門。レイナ(GK)、リカルド・カルバーリョ、アレックス、ミゲル、リーセ(以上DF)に続く選手は……。

 MFでまず外せない選手を一人挙げよと言われれば、いくらあまのじゃくでも、当たり前の選手を挙げざるを得ない。カカは優勝したミランの中で、最も活躍した選手である上に、得点王にも輝いている。この際、ついでに、最高殊勲選手賞も与えてしまおう。

 昨季の最高殊勲選手、ロナウジーニョ(バルセロナ)に比べて勝る点は「遂行能力」だ。プレイを最後までやりきる力は、カカの方が上。ボールを保持しながら、トップスピードに乗った瞬間こそが、彼の最大の見せ場。瞬間、決定機が迫っていることを予感させる。相手ゴールまで離れた場所にいても、距離を感じさせない、期待感や怖さを抱かせるのだ。甘いマスクの持ち主で、いわゆるファンタジスタ系に属する選手だが、持ち味は小細工より、ゴールに直結した、スケールの大きなプレイになる。「作る」というよりも「決める」タイプ。今日的な10番選手とは、まさに彼のような選手を指す。

 ブラジル代表でロナウジーニョとどう共存するのか。こうなると、野次馬的な関心も湧いてくる。1人で十分なのに2人いる。贅沢な話ながら、実際には1+1は2になりにくい関係だ。オフザボールの際には、むしろマイナス材料が増える。

 どちらか一人を落とせば角が立つし。かつての西ドイツ代表におけるネッツァー、オベラートの関係以上に、高度な問題だ。2006年のドイツ大会で、ブラジルが敗れた一因もそこにあるわけで、ドゥンガ監督はこれにどう対処するのか。

 少なくともこの瞬間に限れば、ロナウジーニョはベンチ。僕がブラジル代表監督ならばそうするだろうし、このCLベスト11でも、ロナウジーニョは選外にさせていただく。

 リバプールが決勝でミランを倒していたら、誰が最高殊勲選手に輝いていただろうか。僕ならカカに匹敵する、高いプレイ遂行能力を持つジェラードを推す。カカより幾分荒さは残るが、それがプレイに迫力を醸し出していることは事実。彼ほど強烈なパンチ力を備えた選手も珍しい。そのうえ守備にも熱心。ボールと相手を追いかける姿も、相変わらず眩しく映る。むしろカカ以上に、近代的な中盤選手と言えるのだ。

 カカ、ジェラードに続く選手は、シャビ・アロンソ(リバプール)となる。彼ほど、ベストなパスコースを、瞬時に見抜く才能を持った選手はいない。インサイド、インステップ、インフロントそれぞれのキックを、状況によって使い分ける術はさすが。そのうえフォームも美しい。中盤の少し後方から試合を組み立てる選手では、ピルロ(ミラン)も捨てがたい選手になるが、チーム全体の組み立てのリズムに、与える影響力という点でシャビ・アロンソに劣る。もっとも、ピルロがリバプールに入れば、プレイスタイルも変わるに違いないと思うが……。

 残るはいよいよ3人。4−3−3を採用すれば、残る3人はFW系の選手となる。4−4−2にすれば、MF枠にもう一人飛び込むことになる。その場合には前出のピルロに加えて、エッシェン(チェルシー)、アルベルダ(バレンシア)が候補になる。どちらにしようか悩むところだが、ここは布陣のトレンドを重視して、4−3−3で迫ることにしたい。

 FWの1人目は、センターフォワードタイプから選びたい。スペインリーグで得点王の座に就いたファンニステルローイ(レアル・マドリー)の姿がふと頭を過ぎる。典型的なCFタイプの代表格であるからだ。しかしレアル・マドリーは、CLではベスト16で消えている。早すぎる敗北を喫している。そのチームのストライカーがベスト11に入るには、貧弱な成績だと言わざるを得ない。

 というわけで、結論はドログバ(チェルシー)。CFタイプではあるが、より今日的なスタイルを持っている。十八番のプレイはないが、それでいて存在感はある。どんな状況にも対応できるオールマイティな能力がある。もちろん、高い守備能力も備えている。エトーやカヌーテ同様、アフリカ選手らしい異次元的な魅力もある。ワントップは彼で決まりだ。

 残る2人もプレミアリーグから選びたい。まず、クリスティアーノ・ロナウド(マンチェスター・ユナイテッド)。かつてはひとたびボールを受けると、個人プレイに没頭したものだが、今季は、周囲の空気が読めるようになった。視野を広く保ち、逆サイドを常に意識していた。ドリブルプラスアルファの魅力が加わり、総合力の高いスケールの大きな選手へと成長を遂げた。一皮むけた気がする。

 バランスを考えれば、3人目もサイドアタッカー系の選手を選びたくなる。すぐに、メッシ(バルセロナ)の名前が頭を過ぎる。だが彼はベスト16で消えた。負けた対リバプール戦では、相手の守備網にまんまと引っかかり、完封されている。才能的には、ベスト11入りして当然だが、ここではご遠慮いただく。

 また、シーズン後半になって、ようやく本来の姿を取り戻したホアキン(バレンシア)も、来季のお楽しみに取っておくことにしたい。

 というわけで、FWの3人目はルーニー(マンチェスター・ユナイテッド)。トップ下はもとより、サイドも何とかこなせそうなアタッカーとしての総合力が魅力だ。足下がしっかりしていて、ボールの収まりが良いので、安心してみていられる選手。プレミアより、ボールに触れる回数が増えそうな、スペインの方が……とは、個人的な見解だ。例えば、マドリーでプレイすれば、もっと偉大な選手になれるんじゃないだろうか。マドリーの白いユニフォームと、そのプレイとはとても良好な関係にあると思うのだ。

 レイナ、R・カルバーリョ、アレックス、ミゲル、リーセ、カカ、ジェラード、シャビ・アロンソ、ドログバ、C・ロナウド、ルーニー。僕的にはこの11人で。異論多数だとは思いますが。

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