日本代表、2010年への旅BACK NUMBER
【W杯アジア最終予選/vs.豪州】
逆転負けで、悪夢再び。
~W杯ベスト4から遠ざかった夜~
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph byTamon Matsuzono
posted2009/06/18 12:20
あの場でどう修正すれば良かったのか? 選手たちの声。
この日のオーストラリアのような攻めを封じるためには、何をすればよかったか。
岡田監督はハーフタイムの際に、「サイドを変えて、(ボールを)下げてもいいからボールキープを長くしろ」と指示を与えている。
つまりは日本がある程度長い時間、ボールを保持しておけば、オーストラリアはパワープレーに打って出られない。無理に攻め急がず、ポゼッションすることで、相手の狙いを封じようとしたのだ。
だが、保持率は思うほど上がらなかった。オーストラリアのプレスは前半に比べて緩んだはずなのに、球際での劣勢がチームの落ち着きをなくしていた。裏への一発のパスばかりを狙い、それがミスパスとなって逆にピンチを招いてしまう。
内田篤人は試合後、「(日本は)横の動きが少なかった。球際? なんだかんだいってもそこ。うまく(パスを)回せれば……」と唇を噛んだ。
玉田圭司も同様に、歯切れが悪い。
「もっと落ち着いてボールを回したり、どこかでスピードを上げるとか、そういう自分たちのサッカーをすれば、相手のサッカーをさせないことにつながる。(裏への)一発を狙いすぎるとどうしても押し上げが短くなる。ポゼッションで時間を使えば(押し上げもできて)、もっと日本らしいサッカーができると思うんだけど」
この敗戦で岡田ジャパンの方向性は揺らいでしまうのか?
分かってはいても、対応できなかった。
ボクシングにたとえて言うなら、スピードを武器とするボクサー(日本)が、パワーを身上とする相手(オーストラリア)の得意とする接近戦に持ち込まれそうになったとき、足を使うアウトボクシングをしてひと呼吸つけばいいものを、打ち合いに付き合ってしまったという印象だ。いや、意地悪く考えてしまえば、『逃れることができずに、付き合うしかなかった』可能性もある。もし、アウトボクシングの軸となるステップワーク、すなわちポゼッションをこのぐらいの相手(オーストラリアは前回、決勝トーナメントに進んだ強豪国とはいえ、この日のチームにはさほど強さを感じなかった)にしっかりできないというなら、日本は、大きな問題を突きつけられたということになる。
個々のフィジカルに差があっても、日本人の特性である俊敏性と献身的なサッカーで活路を見出そうとしているのが岡田ジャパン。その方向性は、きっと間違っていないと信じたい。
玉田も、闘莉王も、内田も危機感を持つような厳しい顔つきで、移動のバスに乗り込んだ。高い授業料を払わされてしまったが、歯ごたえのあるオーストラリアとの勝負から学ぶことは、決して少なくなかった。