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打ちのめされたバイエルン。 

text by

安藤正純

安藤正純Masazumi Ando

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photograph byTakuya Sugiyama

posted2009/04/16 07:01

打ちのめされたバイエルン。<Number Web> photograph by Takuya Sugiyama

 歴史的大敗である。スコアだけでなく、内容も。その差は大学生VS幼稚園児、横綱VS十両、イージス艦VS戦艦大和ほどあったと思う。チャンピオンズリーグ(CL)準々決勝、バルセロナ対バイエルン・ミュンヘンのことだ。第1戦の結果は0-4だが、審判のミスジャッジがなければ、そして後半に相手が手を抜かなければ、どれだけ追加点が発生したか分からない。

 大一番を控え、発行部数で欧州1位を誇るSport Bild誌のウェブサイトにはこんなアンケートが掲載されていた。『バイエルンはバルセロナ相手に何失点すると思いますか?』。読者が自由に投票できるシステムで、リアルタイムで結果が出てくる仕掛けだ。

「ったく、ふざけた質問だなぁ。ふだんから愛国主義を振りまいているというのに、何なのだこれは」とブツブツ言いながらも私は自然と「2失点」を選んでしまった。ウッ…(泣)。

 途中経過をのぞいてみた。すると、私の自虐度などまだまだ甘いことが判明した。多い順に紹介すると、3失点20%、2失点20%、1失点19%、そして5失点「以上」というドMが11%、4失点11%である。無失点と予想した世間知らずが10%いたのは平和ボケゆえか。ファンは「今のバイエルンじゃ勝ち目はない」と観念し、アンケートを実施したマスコミも最初から白旗を上げていたのだ。

レギュラー陣が次々故障し、失点もどんどん増えて……。

 第1戦はDFのレギュラー3人が欠場した。ファン・ブイテンは父親が危篤で、ルッシオとラームは怪我で。絶不調のレンシングが外され、控えのブットがGKを務めた。02年CL決勝戦でジダンのボレーシュート1発に泣いた34歳のベテランだが、またもやスペイン勢の引き立て役となってしまった。第2戦はルシオとラームが復帰して、0.1%ほどしかない勝利の確率に期待を込めたが、1点を取るのがやっと。引き分けの結果でも「よくやった」としか適当な言葉が見つからない。

 今季のバイエルンは失点が異常に多い。それも前半の早い時間からポンポン入れられている。ブンデスリーガは26節現在で早くも36失点を献上、これは史上ワースト2位の記録だ。前年は15失点だったのでDFがすっかりザルと化したというわけである。第1戦の4日前には、ヴォルフスブルグ相手に1-5と惨敗。国内でこれだけの点差をつけられたのは7年ぶりだ。悪い成績はまだある。CL直前10試合の成績なのだが、これが5勝4敗1分で、5勝のうち2つはCLで計12失点を食らったヘタレの根性無しチーム、スポルティング・リスボンが相手だったので割り引いて考えなくてはいけない。なにより、“お得意様”のケルンやベルリンに競り勝てなくなった事実が事態の深刻さを物語っていると言える。

【次ページ】 クリンスマンへの不満がつのり、ドイツサッカー全体も沈んでいく。

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ユルゲン・クリンスマン
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