Column from GermanyBACK NUMBER
打ちのめされたバイエルン。
text by
安藤正純Masazumi Ando
photograph byTakuya Sugiyama
posted2009/04/16 07:01
クリンスマンへの不満がつのり、ドイツサッカー全体も沈んでいく。
選手の声を拾い集めると、やはり、というか、クリンスマン流の指導に相変わらず戸惑いを隠さない。攻撃面ばかりに目が行くのは彼の性格だ。これは仕方がない。だが戦術的指導の欠如に加えて選手を不公平に扱うようでは、監督を信頼する気持ちにならないではないか。ファン・ボメルを主将に指名しておきながら大事な試合に出さない、地元っ子のラームに副キャプテンの座も与えない、古くから一緒に仕事をしているコーチ陣への身内贔屓――。「チーム内に彼の友人はいないさ」と知り合いの記者が教えてくれたが、たしかにクリンスマンを人前で擁護しようとする選手など1人もいないのだ。ゼ・ロベルトもクローゼも「勉強中の監督」と皮肉な本音を漏らしている。
バルセロナであまりに大きなショックを受けたクラブ首脳陣は、次の一手に考えが及ばないほど徹底的に打ちのめされたようだ。
「怒るべきか悲しむべきか、答えが出ない」(ルンメニゲ会長)
「前半で見たのは、これまででいちばん酷いバイエルンだった」(ベッケンバウアー)
衝撃はドイツサッカー界全体に及ぶ。ブレーメン、シャルケ、ハンブルガーSV、レバークーゼン、シュツットガルトを含め、ドイツ勢は毎年、欧州の舞台から早々に撤退していて、もはや「参加するだけ」の惨めな状況に陥っている。そんな苦境を打破する唯一の可能性を秘めたバイエルンでさえ、バルサによって完全に解体されたのだ。これはもう、ドイツサッカーの根本的改革が求められているということではないか。しっかりせい!
強いドイツ、強いバイエルンを再び!
26年前、バイエルンはチャンピオンズカップ(CLの前身)準々決勝でアヤックス相手にアウェーで0-4と敗れた。13年前、バルサに負けたバイエルンは直後にレーハーゲル監督を解任、そして10年前はマンU相手にあの“バルセロナの夜”があった。
0-4とバルセロナ。2つのキーワードが重なる偶然性に嫌な予感が漂う。クリンスマンでもダメだったとなれば、いったい次は誰がバイエルンの監督を務め、どういうサッカーをしていけばいいのだろうか。
クラブレベルでドイツは急坂を転げ落ちている。リベリーとポドルスキが移籍し、ラームもそれに続くとなると、バイエルンの凋落は加速度を増すことだろう。
毎年発表される“健全な財務”の話などもう結構だ。ファンは強くて魅力に溢れ、尊敬されるチームを見たいのだ。ちょうどこの夜のバルセロナのように。