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W杯グループに恵まれたイングランド。
2018年のW杯招致には大苦戦中。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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posted2009/12/14 10:30

W杯グループに恵まれたイングランド。2018年のW杯招致には大苦戦中。<Number Web> photograph by Action Images/AFLO

南アフリカのケープタウンで行われた抽選会に、イングランドからはベッカムが“参戦”。今後、2018年W杯招致への切り札となるか?

「自滅寸前」の招致運動の切り札は、デイビッド・ベッカム。

 実は、それぞれFAとプレミアリーグを率いるトライズマンとリチャーズの確執の発端は、招致委員会設立の2年前まで遡る。当時、FA会長に就任したばかりのトライズマンは、クラブの赤字経営に目を瞑り、表面的なビジネス拡大を優先するリーグの方針を公然と非難したのだった。リーグが画策していた海外での「シーズン第39節」実施案を事実上消滅させた中心人物もトライズマンだ。

 今回のW杯招致において、FIFAに具体的な開催案を提出する2日前になってリチャーズは辞任した。これはFAに対するリーグの復讐とも受け取れる。

 残されたトライズマンたちは、マスコミで「自滅寸前」と叩かれた招致活動を蘇生させるべく、デイビッド・ベッカムという切り札に頼らざるを得なかった。

 早くから招致への協力を依頼されていたイングランド最大の「歩く広告塔」は、幼い頃から慕っていた祖父の死去という悲報にもかかわらず12月2日に南ア入り。ゲストとして壇上に立った抽選会の舞台裏で母国の売り込みに尽力した。

 対談の場を持ったゼップ・ブラッターFIFA会長は、「“ベッカム・ブランド”を徹底的に活用すべきだ」と前代表キャプテンがもたらす宣伝効果を絶賛。マスコミでは、開催国の投票権保持者とその家族がベッカムとの記念撮影に興じていたという情報が伝えられ、直前まで退任要求の声に晒されていたトライズマンも「インパクトは絶大だった」と笑みを浮かべる結果となった。

 だが、2018年の開催国が決定するのは来年12月。本当の誘致争いはこれからだ。まったく油断は出来ない。

果たしてイングランドにW杯開催国としての資格はあるのか?

 そもそも、「サッカーの母国」を自負するイングランド国民の大半は開催国としての資格は十分と思っている節があるが、本当にそうだろうか?

 歴史は世界一だが、たとえば現在のイングランド・サッカーが、招致ライバルのスペイン(ポルトガルとの共同開催)に勝っているとは言い難い。自動車道や交通機関のレベルは、同じく候補国の米国に劣ると思われる。活動資金も、目標の1500万ポンド(約22.5億円)の調達が怪しいイングランドに対し、“オリガルヒ(新興財閥)”を後ろ盾に持つロシアは、4000万ドル(約35.5億円)の軍資金を持つと言われる。

【次ページ】 楽勝ムードに浮かれていると足下をすくわれかねない。

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