リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
中村俊輔とエスパニョールが迷走中。
ポチェッティーノ監督に解任危機?
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byDaisuke Nakashima
posted2009/12/16 10:30
第13節、ホームで0-4の大敗を喫したラシン戦での中村俊輔。12日に行われた第14節バルセロナ戦では1-0で敗北したが、ポチェッティーノ監督は「チャンピオンと我々の間には、そう大きな違いはなかった」と満足げにコメント。中村の出番はなかった
第7節のテネリフェ戦に勝利してから勝利が無いエスパニョールの順位が急降下している。
テネリフェ戦以後、エスパニョールが挙げたゴールは1対1で引き分けた第9節のバジャドリー戦のみとなっており、5試合に渡ってゴールが途絶えている。そもそも開幕当時から得点力不足に陥っていたエスパニョールは、守備が踏ん張って勝ち点を得てきたのだが、最近では4対0と大差で敗れる試合もあり守備も崩壊。まさに攻守においてチームが全く機能していない状態となっている。
そして、その中で中村俊輔もまた厳しい戦いを強いられている。
ポゼッション重視からカウンター重視への逆戻りで混乱が。
シーズン開幕前にはポゼッションサッカーを志向したポチェッティーノ監督だったが第2節のレアル・マドリー戦で地力の差を見せ付けられるように0対3と大敗すると、その信念は早くも揺らぎ始めた。
ボールを保持するまでは良いものの、攻撃を仕掛ける段階でミスを犯してカウンターを浴び、ゴールは遠ざかり失点の危険ばかりが高まるという負の連鎖が始まってしまったのだ。これは昨季、降格ゾーンに沈み続けていたエスパニョールと全く同じ状態である。第30節の時点で最下位だったチームが残り8節で奇跡的な復活を遂げたのは、現監督ポチェッティーノの守備組織の再構築のおかげだったのだが、皮肉なことにポゼッションサッカーを志向したことによってポチェッティーノは自ら作り上げた守備組織が乱れる状況を生み出してしまった。
ポゼッションサッカーが機能しないことで、ポチェッティーノは第3節あたりから素早く原点への回帰を図った。
昨季終盤に勝ち点を積み重ねたルイス・ガルシア、イバン・アロンソ、タムード、ネネ(モナコからのレンタル)らを、デラペーニャが指揮していくカウンターである。
ポチェッティーノがチーム戦術の変更をしたことによって、パスサッカーの中で重要な役割を担うはずだった中村の起用法も必然的に変わり始めていた。足首の負傷によって万全ではなかったことも重なり、中村は先発を外れるようになった。
シーズン序盤の反省を活かしたはずの原点回帰で失敗!
だが、ポチェッティーノの原点回帰はうまくいかなかった。
クラブ首脳とのいざこざでタムードは戦列から離れ、デラペーニャも負傷で戦線離脱。左サイドからの突破とアシスト、さらにはゴールまでも兼ね備えていたブラジル人レフティー、ネネはレンタル元のモナコへと復帰しており、昨季のエスパニョールの攻撃を牽引していた主軸選手たちの姿は消えていた。威力を失ったカウンター攻撃がゴールをもたらすことはなかった。
カウンター攻撃からポゼッションへの変換を目指してプレシーズンに作ったチームが、カウンター攻撃に向かないことは、当然のことだった。