チャンピオンズリーグの真髄BACK NUMBER
バルサを超えるバルサ。
~CL2連覇の可能性~
text by
杉山茂樹Shigeki Sugiyama
photograph byMutsu Kawamori
posted2009/06/15 06:00
マンUも果たせなかったチャンピオンズリーグ連覇の夢に、来季バルサは挑戦する。
試合内容が、今季の決勝戦ほど一方的な内容になったケースも珍しい。試合開始直後こそマンUのペースだったが、開始10分にエトーが先制ゴールを決めると、バルサが徐々に試合を支配。試合が深まるにつれ、バルサペースはより色濃くなっていった。
15年前のCL決勝、バルサは一方的に敗れ去った。
最近では、3-0に終わった5年前の決勝(モナコ対ポルト)がスコア的に最も離れていたが、内容はせいぜい「四分六」。1-0でもおかしくない3-0だった。
もう少し遡れば、同じく3-0のスコアだった9年前のレアル・マドリー対バレンシアを連想するが、この結果は、挑戦者のバレンシアにケガ人が多くいたことと深い関係にある。戦う前からある程度、予想されていたスコアだった。言い方は悪いが、あまり語りたくない決勝になる。
文字通り一方的な決勝戦を探せば、15年前の'93-'94シーズンまで遡ることになる。スコアは4-0。勝者はミランで、敗者はバルサ。すなわちバルサは、一方的な敗戦と勝利を決勝で両方味わったことのあるチームになる。
ただし、15年前と今回との間には、試合前の下馬評という点において、決定的な差が存在する。15年前はバルサ有利が8割を占めた。4-0で大勝したミランは、下馬評で圧倒的に下回っていた。ミラン、バルサともに、名門でありビッグクラブなので番狂わせという言葉は似つかわしくないが、予想外の出来事であったことは確かだ。
互角の予想を“大爆発”で吹き飛ばしたバルサ。
一方、今回の予想はまったくの互角だった。少なくとも僕は、こうしたケースにはお目にかかったことがない。決勝戦のみならず、それ以外の試合でも記憶にない。W杯など、ブックメーカーの予想を眺めたすべての試合に対象を広げても、である。
そこでバルサは、マンUに対して完勝した。予想とは裏腹な結果に終わったわけだが、バルサというチームの特徴は、この2度の決勝戦に端的に表れているような気がする。必要以上に負けることもあれば、必要以上に勝つこともある。ドジを踏みやすいが、大爆発もする。振れ幅が大きいのだ。悪く言えば、安定感に欠けるとなるが、良く言えば人間的だ。現代社会においては奇特な、独特の匂いを持った存在だと言える。これもまた「世界で2番目に好きなチーム」と言われる所以かもしれない。
バルサの'91-'92シーズンの初優勝については、この目で確認したわけではないので、詳しいことは言えない。それがどんな勝利だったのかよくわからないが、CLにおいて、バルサの予想外の完勝を見たのは、今回が初めてだったような気がする。決勝でアーセナルを下した3年前も、バルサらしい優勝という感じではなかった。GKの退場で10人になった相手を2-1で下した姿には、バルサらしいスペシャルな味わいはなかった。