Column from SpainBACK NUMBER
世界記録更新なるか?
~「負けない」スペインの挑戦~
text by
横井伸幸Nobuyuki Yokoi
photograph byJamie McDonald/Getty Images
posted2009/06/17 06:01
「コンフェデレーションズカップのこと知っていますか?」
あるスポーツ紙のウェブページにあるクイズ形式のコンテンツのタイトルだ。
スペインの人々にとってこれまで無縁だったこの大会は知名度も重要度も低く、サッカーファンやメディアの間でも微妙な扱いを受けてきた。デル・ボスケ監督は「負けたら一大悲劇、勝っても大したニュースにならなかった」レアル・マドリー時代のインターコンチネンタルカップ(現在のクラブワールドカップ)にたとえたが、まさにそんな感じ。
それゆえ(今年は移籍市場も賑やかだし)、あまり話題にならないのではと思っていた。ところが、なかなかどうして、当のメディアが頑張って盛り上げている。シーズンオフの売り上げを落としたくないから──というと身も蓋もないので、スペインが代表史上3つ目のタイトルを獲ろうとしているからということにしておこう。
実際、主要ブックメイカーだけでなくブラジル代表のドゥンガ監督までもがスペインを優勝候補に挙げ、デル・ボスケも「優勝に一番近いとされる権利を、うちの選手たちは昨年のユーロで勝ち取った」と語っている。簡単には行かないだろうが、現実味のある話であるのは間違いない。
不安要素は選手たちのコンディション不良。
ただし今回のスペイン代表のコンディションは、ユーロのときが100%だとしたらせいぜい70%から80%ぐらいだ。
理由のひとつは故障明けの選手が多いこと。
カソルラは4月の初めに腓骨を折り、手術を受けた。シルバは5月の半ばに肉離れを負った。ピケも同じく肉離れで、リーガ最終節を途中退場し、プジョルはCL決勝で足首を痛めた。そして、セルヒオ・ラモスは恥骨炎を抱えている……。
全員回復してはいるけれど、万全の状態とは言い難い。
セナとイニエスタ欠場の穴をいかに埋めるか。
もうひとつはマルコス・セナとイニエスタの不在だ。
セナは4月半ば、左脚のハムストリングに肉離れを負い、当初全治3週間と診断されながら結局間に合わなかった。イニエスタも5月上旬に右大腿四頭筋を肉離れ。一旦治してCL決勝に出場したが、そこで再発させてしまった。筋間中隔というデリケートな箇所を痛めており、しっかり治さないと数カ月どころか年単位の欠場になりかねないらしい。レアル・マドリーに入団した後、1年間ただリハビリだけをしていたウッドゲイトが前例だ。
この2人がいないというのは、中盤が命のスペイン代表にとってはかなり痛い。
セナの代わりを務めることになるシャビ・アロンソやセルヒオ・ブスケッツにはセナ以上の展開力があるけれど、戦術的な守備力ではセナに及ばない。
イニエスタはシャビの最高の相方。ボールをキープし、その流れを円滑にし、ドリブルをしては敵の守備ブロックを崩す。いまスペインで最も完璧に近い選手だから、セスクやシルバも良いけれど、完全な穴埋めはできない。“ひとりでやれること”を考えるとイニエスタは唯一無二だ。