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チェルシーは2年間の選手獲得禁止。
プレミアに下ったFIFAの残酷な鉄槌。 

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山中忍

山中忍Shinobu Yamanaka

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photograph byREUTERS/AFLO

posted2009/09/24 11:30

チェルシーは2年間の選手獲得禁止。プレミアに下ったFIFAの残酷な鉄槌。<Number Web> photograph by REUTERS/AFLO

ブラッターはどこまで本気で“青田買い”を阻止しようとしているのか。写真は今年7月オバマ米大統領と会談後の記者会見時のもの

外国から家族ぐるみで移住・移籍させるという公然の秘密。

 FIFAの国際規約によれば、ユース選手が国外に所属先を変更するためには、サッカー以外の理由による保護者の移住が前提となっている。だが、息子のキャリアに都合の良い転職や転出がそうそうあるはずもない。筆者は以前、当時リーズでユース部門を担当していた人物に、その証明方法を聞いて唖然とした記憶がある。イングランドFAは、英国への入国日や息子の通学先などを記した保護者の手紙さえあれば移籍登録の手続きを進めるとのことだったのだ。カクタのチェルシー入りを可能にした父親は、いかなる理由でリール(フランス北東部の工業都市)のアパートから、閑静な住宅街として知られるウィンブルドン(ロンドン南西部)の一戸建てに転居したのか? 世間の耳には、「クラブがアレンジした」という噂の他は何も聴こえてこない。

解決策は「ユース所属先での限定プロ契約」のみでは?

 このように、全員が“共犯者”と言えなくもない状態の青田買い。違犯行為の続発を避けるには、最初のプロ契約先をユース所属先に限定する以外にないと思われる。イングランドであれば、選手が16歳の時点で籍を置いているクラブにのみ契約が許されるという具合だ。この方法であれば、選手の心が他クラブに向いていても、育成元はプロ選手の移籍金として正当な代償を得ることができる。選手とその家族には、交渉のプロである代理人を介して好条件の移籍を実現できるというメリットがある。買い手側のコストも、FIFAによる処分や裁判での費用を考えれば決して高くはない。チェルシーなどは、補強禁止の影響で成績が振るわずに新監督を早々に解雇するはめにでもなれば、支払うべき違約金はランスが希望していた示談金をはるかに上回る規模になってしまう。

 とどのつまりは「金」なのだから、道徳心に訴えかけても大幅な改善は期待できない。「痛いところを突いてやる」と意気込んでいるブラッターだが、そのエネルギーは、売買に絡む各自の「欲」を合法的に満たすためのルール改定に向けられるべきではないだろうか?

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ジェレミー・エラン
ポール・ポグバ
ガエル・カクタ
ゼップ・ブラッター
フェデリコ・マケーダ
ランス
マンチェスター・シティ
チェルシー
マンチェスター・ユナイテッド

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