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松坂にとって肘の手術は大チャンス?
トミー・ジョン手術で剛腕復活も!
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph byAP/AFLO
posted2011/06/13 10:30
今季は8試合に登板し、3勝3敗で防御率5.30、クオリティ・スタートは2だった松坂大輔
地元では投げ込み重視の松坂流調整法が原因との声も。
しかし、ボストンのメディア、そして影響力のあるブログは松坂にかなり手厳しい。
もっとも影響力のある「ボストン・グローブ」紙には、「松坂との関係を断ち切るべきだ」とハッキリ書いた記者もいたほどだ。
いま、アメリカでは制球が乱れがちな投手に対して特に「不寛容」になっているのがその背景にある。
地元ボストンのファンでさえ、松坂の四球が続くとブーイングも辞さないようになっていたし、評論家も「松坂が先発するときは、ブルペンに対する負担が大きい」とコメントすることが多かった。
加えて、ボストンのメディアの論調を見ていると、自己流の調整にこだわった松坂に対する不信感が見てとれる。「多めに投げ込む調整スタイルが、故障を招いたのではないか?」という疑問が根底にあると見た方がよい。
入団当初は愛されていただけに、その反動も大きい。
投球数に関する日米文化衝突はアメリカ側に軍配が。
2007年、松坂がレッドソックスに入団したときには、「スポーツ・イラストレイテッド」誌が、投げ込みを重視する松坂のスタイルは、投手を甘やかす傾向が強いアメリカの投手育成の常識を覆す可能性もある――とまで注目していた。
つまり、アメリカのメディアは、調整を含めた松坂の投球スタイルを、野球文化における日米の「文化衝突」と捉えていた節がある。日本のワンダーボーイの上陸は、かなり刺激的なトピックだったのだ。
しかし今回、松坂が期待されたような成績を残すことができず、最終的にトミー・ジョン手術を選択したことで、アメリカではやっぱり練習段階から投球数の制限を加えていく方法に間違いはない……そういう結論にたどりついてしまった。
自分なりのスタイルを持ちこもうとした松坂と、投手のマネジメントにかけてはメジャーでも有数の方法論を持つレッドソックス。両者は契約を交わしてから5年目の夏を迎えようとしているが、残念ながら「幸せな結婚生活」を維持することはむずかしくなってしまった。