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“レアルNo.2”バルダーノの追放完了!
クラブを完全支配したモウリーニョ。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/06/01 10:30
チェルシーには50年ぶりのリーグ優勝をはじめとして数々の栄光をもたらしたが、それでも追われるように辞任したモウリーニョ。レアルとの契約は2014年まであるが、バルダーノ追放でその地位も磐石か?
チェルシーでの失敗を繰り返さないための全権掌握。
このようにクラブ幹部が関係する会社が、クラブの事業に携わることに警鐘を鳴らしているのが、ヨハン・クライフだ。クライフはこう語っている。
「大なり小なり、注目を集めようとすれば、クラブの名前を使ったり、イベントに選手を連れ出すことになる。すると、どの選手がどの幹部と仲良くしているかでグループが分かれるようになり、その結果、ロッカールームに派閥が生まれる。サッカービジネスがロッカールームに悪影響を及ぼす一例だ」
かつてモウリーニョはチェルシーで、マンチェスターUのファーガソンやアーセナルのベンゲルのように、長い時間をかけてユースも含むクラブの強化をしようとした。しかし、その権限が与えられず、彼はチェルシーを去った。
レアルでも同じことを望んだ彼にとって、ビジネスを優先する可能性のある人物を会長に次ぐポストに置いておくわけにはいかない。だからこそ、モウリーニョはバルダーノと自分のどちらを取るのか、ペレスに「二択」を迫った。
モウリーニョを選択したペレス会長は“過去の失敗”から学んだのか?
ペレスはモウリーニョを選んだ。これは、2003年夏にマケレレの待遇を巡ってバルダーノに反旗を翻した監督のデルボスケと主将イエロを切り、バルダーノを残した時とは全く逆の選択だ。この選択だけを見れば、ペレス会長は過去の失敗から学んでいると言えるだろう。
デルボスケとイエロを追放した後のペレス会長が獲得したタイトルは、今シーズンの国王杯だけなのだから。
バルダーノとの政争に勝利したモウリーニョは、ついにレアルの全権を握ることになる。育成部門も含め、彼はどのような手腕を発揮していくのだろうか。
バルダーノ一人が去っただけなのにレアルが変わっていくのではないかと思わせるのは、それだけレアルにおけるバルダーノの存在が大きかったことを暗に示している。