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ポスト琢磨の戦い
text by
西山平夫Hirao Nishiyama
photograph byMamoru Atsuta(CHRONO GRAPHICS)
posted2006/12/26 00:00
11月下旬から12月中旬まで、スペインで3回(バルセロナ→ヘレス→ヘレス:各3日間)で行われたF1合同オフテストが終了、なかなか興味深い内容の走行会となった。
来季からF1タイヤがブリヂストン(BS)のワンメイクになるため、今季ミシュラン・ユーザーだったチームにテストランのチャンスを設けるというのが本来の主旨だったが、BSが早くも来季用タイヤに準じたものを用意したこともあって、スパイカーMF1を除く今季BSユーザーチームも参加。季節外れの“熱い”走行となった。
最初のバルセロナではBSを履きなれたフェラーリが初日、2日目とトップタイムを記録したが、3日目は来季マクラーレンからデビューするハミルトンがトップ。ヘレスに移っての初日はやはりフェラーリが速かったものの、雨となった2日目はまたもハミルトン首位。3日目にはホンダがワン・ツー(バリチェロ+ロシター)と、連日トップ交代。
最後のヘレスは初日がルノーのワン・ツー(コバライネン+フィジケラ)。2日目はマクラーレンのデ・ラ・ロサ、3日目ハミルトンと、マクラーレン勢が最後を締めくくった。
もっとも、テスト中のタイムはレースの予選などと違って、各マシンの状況がそれぞれ異なる。新品タイヤで出したものあり、軽いタンクで出したものあり、いちがいにタイムがいいから即実戦でも速いとは限らない。ひとつだけ確実に言えることは、今季ミシュラン・ユーザーだったチームも素早くBSタイヤの特性を理解し、それに合わせ込んだセッティングを見つけることができたということだろう。残念だったのは来季フェラーリに移籍するライコネンがテスト現場まで来ていながら契約の関係で乗れなかったこと。また、バトンもトレーニング中のケガを理由に乗っていない。
さて、このオフテストで注目されたことのひとつに、日本人の若手ドライバー3人がテストに参加したことが挙げられる。
その3人とは小林可夢偉、平手晃平、中嶋一貴の面々で、彼らはTDP(トヨタ・ヤング・ドライバーズ・プログラム)の育成メンバー。将来のトヨタF1ドライバー候補生として最初のステップを踏んだのだ。マシンは小林と平手がトヨタ、中嶋が来季からトヨタがエンジンを供給するウイリアムズ。
最初に登場したのは小林で、バルセロナで1日、ヘレスで2日間走行し、2回目ヘレス最終日に18人中11位のタイムを記録。中嶋はヘレスで2日間走行し、2日目のヘレスで13位。平手はヘレスでたった1日のテストだったが、いきなり19人中12位のタイムを記録している。
F1による初めての本格的な走行でありながら、3人が3人とも大きなミスもなくタイムも悪くなかったことにそれぞれのチームの評価は高かったようで、来季のテスト走行にチャンスをつないだが、3人が口を揃えて語るのはF1マシンのパフォーマンスの高さ。「どこまで行ってもその先がある」(小林)、「限界に近付き切れない」(中嶋)と、F1マシンの凄さに感銘した模様。そうして3人とも自分のテスト・ドライバーという立場をわきまえ、限界の一歩手前でアタックをやめたことも成功といえるだろう。今回のテストはマシンのテストというより、彼ら自身のポテンシャリティのテスト。マシンを壊すなどのミスは禁物だった。
来季は1チームの年間総テスト距離が3万キロとレギュレーションで定められたため、おいそれとテスト・ランはできないが、チャンスが訪れたら大いにその速さをアピールして欲しいものだ。
来季、小林可夢偉はユーロF3シリーズでチャンピオンを狙い、中嶋と平手はF1への登竜門GP2で経験を積む。ポスト佐藤琢磨の戦いに注目したい。