MLB Column from USABACK NUMBER
ヤンキース「黄金時代」の到来か?
~アンチ・ヤンキースの憂鬱~
text by
李啓充Kaechoong Lee
photograph byMLB Photos via Getty Images
posted2009/11/20 10:30
9年ぶりのワールドシリーズ優勝後のパレードで、歓喜にわくニューヨーカー。沿道からは松井にたいして「MVP!MVP!」の大合唱がわき起こった。米メディアによると、100万人以上のファンが沿道を埋めたとのこと
FA補強だけでなく、生え抜きの若手育成にも注力。
さらに「即戦力のスターFA選手を金で買う」だけでなく、最近のヤンキースは「若手をじっくり育てる」ことにも気を配っている。
たとえば、一昨年のヨハン・サンタナのトレード騒動。それまでのヤンキースだったら、サンタナのような「おいしそうなお菓子」を目の前に出されたら、何も考えずに手を出してむさぼり食ったものだった。
旧来の補強パターンだったら、「今勝て、すぐ勝て」とばかりに目先の勝利を優先、若手有望選手数人と引き替えにサンタナを獲得していたはずだったのだが、若手選手を出し惜しんで獲得を断念。メッツが目の前からサンタナを奪っていくのを「じっと我慢の子」で耐えたのである。
なぜヤンキースが「我慢の子」でいられたのかというと、一年待てばサバシアがFAとなることがわかりきっていたからだった。その財力をもってすればサバシアを容易に獲得できるのは明らかだったし、トレードで若手有望選手という「資産」を失うことは得策でないと算盤をはじいたのである。
実際、サンタナと引き替えに若手選手を差し出したメッツが、その後ファームに有望選手が枯渇してしまったのとは対照的に、ヤンキースはサバシアという大エースを獲得しただけでなく、今季リリーフで大活躍したフィル・ヒューズ等、しっかりキープし続けた若手選手が着実に成長した。
FA+育成の「方程式」で、黄金時代を築くか?
その上、最近は「契約金が高くつきそうだから」とお金のない球団が尻込みするような選手も財力に物を言わせてばんばん指名、ドラフトによるアマチュア選手獲得でも優位に立つようになっている。
換言すると、最近のヤンキースは、財力に物を言わせて「即戦力のスターFA選手を調達する」だけでなく、「将来のスター候補選手も数多く獲得、じっくり育てる」両面作戦を展開。「今勝つことだけでなく、将来にわたって長く勝つ」ことをめざしたチーム作りをするようになっているのである。
いわば、金の力で黄金時代を実現するための「方程式」を確立しつつあるのだから、アンチ・ヤンキースの面々は憂鬱にならざるを得ないだろう。