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菊池雄星の扱いが中途半端過ぎる!?
斎藤佑樹と比較するルーキー育成法。
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byHideki Sugiyama
posted2011/05/07 08:00
昨年末には本人からの希望で、登録名を「雄星」から「菊池雄星」へと変更した。昨季の長く続いたリハビリ期間中は、ほとんどメディアにも出ることが無かった
菊池は「20年にひとりの逸材」にもかかわらず……。
彼は一昨年、春と夏の甲子園で活躍し、20年にひとりの逸材と言われ、日米間で史上まれにみる争奪戦が繰り広げられたほどの選手である。
ルーキーイヤーとなった昨年は左肩の故障で一軍では1試合も登板できなかったとはいえ、わずか1年で価値が暴落するような選手ではない。大学卒や社会人出身ならまだしも高校出の選手である。まだ19歳なのである。
今季、故障明けで調整が遅れていた菊池は、そもそもゴールデンウィーク明けに照準を合わせていた。
「昨年は焦って失敗した。だから、今季は絶対に焦らない。5月ぐらいに一軍に上がれればいい。そのかわり、そこで上がれたら、もう二度と落ちないぐらいの気持ちでいる」
だが球団は、左の中継ぎ陣が手薄だという理由で、まだ完全に仕上がっていない菊池を一軍に帯同させた。にもかかわらず、一度も登板機会は与えられなかったのである。扱い方があまりにも中途半端過ぎやしないだろうか。
菊池はいきなりの先発デビューに値するだけの投手である。
個人の事情よりもチーム事情が優先されるのは当然といえば当然だ。
また、崖から突き落とし、自力で這い上がってこいという姿勢もときには必要だろう。だが少なくとも、菊池ほどのルーキーがデビュー前に辿るべき道ではない。今の菊池は、不当に競争させられているような気がしてならない。
プロボクシングの世界では、アマチュアで実績のある選手は、4回戦からではなく、6回戦からデビューできるという制度がある。
それにならえば、菊池も中継ぎで経験を積むというような過程は省き、いきなり先発デビューさせてもらえるだけの資格は十分に有しているはずだと思うのだが……。