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田臥勇太 「どの道を選んでも正解にすることは出来る」 

text by

宮地陽子

宮地陽子Yoko Miyaji

PROFILE

photograph byShinji Kitayama

posted2008/10/23 20:59

田臥勇太 「どの道を選んでも正解にすることは出来る」<Number Web> photograph by Shinji Kitayama

 しかし、ヨーロッパのチームとの契約は思っていた以上に難しかった。8月も半ばを過ぎ、9月が近づいても、ブレックス以外のチームからの契約オファーは来なかった。

 8月末、そろそろ返事が欲しいというブレックスの要望を受け、田臥は1日だけ時間をもらい、目の前の選択肢について考えに考え抜いたという。

 「正直、めちゃくちゃ迷いましたね」と田臥は振り返る。「ずっとアメリカでやってきたので、日本のバスケットがどういうものなのか、どういう違いがあるのかがわからなかった。それぞれメリットとデメリットがあるだけに、本当に迷いました。そこに正解はないというのも、行き着いた結論だったんです」

 道がいくつかあったとき、どれを選んだから正解だということはない。むしろ、どの道であっても、選んだ道で結果を出すことでどんな選択でも正解に変えることはできる。そう納得したことで、田臥はブレックスでプレーすることを決意した。

 「圧倒的なスタッツを目指しています」

 9月2日、ブレックスの入団会見で、田臥は言った。日本のバスケットボール界では滅多に聞いたことがないような刺激的なこの言葉は、早速、新聞や雑誌の見出しを飾った。チームへの入団会見の場で個人成績の目標、しかも「圧倒的なスタッツ」という表現を持ち出すことは、いかにもアメリカ帰りの選手らしいと受け止められたのかもしれない。

 NBAやヨーロッパのチームに売り込むためには、個人成績が重要だ。それは、田臥がアメリカに渡ってNBA挑戦を始めてから5年の間に、痛いほど思い知らされたことだった。海外にチャレンジし続けたいという気持ちを持ち続けているなら、当然の目標だったのだ。対戦相手の選手からすれば挑戦状と思われても当然の言葉だが、それは覚悟の上だった。田臥自身、決してその目標が楽に達成できると思っていたわけでもない。

 「まわりは圧倒的な数字なんて出させないと思っているでしょうし、僕自身も、そう簡単にいかないと思ってます。でも、そこは絶対に目標にしなくてはいけないし、口にして当然のこと。国に関係なく、どの選手でも思っていることを言ったまでだったんです」

 ただでさえ“元NBA選手”として注目されるだけに、この言葉は大きなプレッシャーとなってのしかかる。それも承知の上だ。

 「自分にプレッシャーかける意味もあります。もちろん自分でも、それだけできる、やらなきゃいけないという自覚もある。今までは不言実行のところがあったので、今回はそうやって口に出して言っていくこともひとつのチャレンジと捉えているんです」

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