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田臥勇太 「どの道を選んでも正解にすることは出来る」
text by
宮地陽子Yoko Miyaji
photograph byShinji Kitayama
posted2008/10/23 20:59
ブレックスの加藤HCは、本人の言葉を借りると春から夏にかけて「死んでいた」のだという。高校では名コーチとして名を馳せ、名門能代工業を率いて何度も頂点を極めてきたが、3月末、新しい挑戦を求めてブレックスのコーチに転身。高校生の代わりに大人の、しかもプロ選手を率いることになり、自分のやり方を変えなくてはいけないのではないかと思い込み、悩んでいたのだという。
そんな恩師・加藤の迷いを、田臥は会ってすぐに察した。
「明日が(入団)記者会見だっていう日に、勇太が『俺、先生(加藤)のバスケットがやりたくて来たのにな』ってボソっと言うんですよ」と加藤。その言葉に、加藤は目の前がパッと開けたような気分になったという。
田臥もそのときのやり取りを思い返す。
「正直、迷いがあるように見えたんです。僕は彼(加藤)のよさは、まわりから何を言われても、能代のような彼独特のバスケットをやり通すっていうイメージだったのに、それが違っていた。プロはこうじゃなきゃいけない、みたいに(思い込んでいた)。
でも、たとえばNBAのゴールデンステイト・ウォリアーズのドン・ネルソンHCを見ても、とんでもないオリジナルなバスケットをやっているじゃないですか。そういうバスケをしたらいいんじゃないですかって言ったんです。そこに正解はないと思うし」
どんなやり方をしても、絶対的な正解はない。それなら自分の信じる道を進めばいい。それは、自分が悩んだときに辿り着いた答えそのものだった。
(以下、Number714号へ)