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宴会自粛の千鳥ヶ淵、上野、谷中。
桜の下で震災後の日本を考えた。
 

text by

疋田智

疋田智Satoshi Hikita

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photograph bySatoshi Hikita

posted2011/04/23 08:00

宴会自粛の千鳥ヶ淵、上野、谷中。桜の下で震災後の日本を考えた。<Number Web> photograph by Satoshi Hikita

「サクラサク」と言えば東京大学?

 さて、谷中から、千駄木、根津と走ってきて、最後にたどり着いたのが東京大学だった。

 今回、最初から思っていたんだけど、やはり桜ってのはね、受験勉強、合格発表、卒業式、新入学、という悲喜こもごもの一連の学校行事の流れにそぐう感じがして、そうなると、やはり「受験勉強の殿堂」というか「サクラサク電報」というか、なんとなく東大に似合っているという感じがするじゃないすか。

 で、あくまでイメージに過ぎないんだけど、この時期の東大本郷キャンパスは、桜だらけ、という気がしてた。で、文京区本郷着。正門(赤門じゃなくて鉄門の方であります)をくぐってみた。

 目の前には有名な銀杏並木。それは分かっていたけれど、あれま、桜はないんだね。

 では、と、総合図書館横、つまり合格発表の掲示板があるところに行ってみた。

 あ、意外。ここも桜なし。

 こここそ毎年バンザーイとか、胴上げとかやっていて、テレビニュースなんかに出る場所なんだけど。え? 胴上げの背景に、桜って映ってなかったっけ? 探してみた。でも、ないのだ。ふーむ、イメージというものは、かくもあやふやなものだったんだなあ。

 そこから有名な「三四郎池」の方に降りてみた。三四郎池ってのは、都心の真ん中にありながら、森閑として水と緑の自然公園のような一角なんだけど、ここにもやはり桜なし。拍子抜け。

 次第に分かってくることなんだけど、東大桜、医学部の方にだけちょっと並木があるだけで、この広い敷地の中、桜密度は非常に低いのである。

東大で最も有名な桜はしだれ桜だった。

 唯一「東大の桜」というに足る(?)桜が、安田講堂前にある一本のしだれ桜だった。決して大きいとは言えない樹だが、そこから時計台を見上げるように撮ると、このページのような写真になる。

 おお、なんとかこれがイメージ通りかな。

 なーんて思っていたら、わはは、他に撮影者が続々と現れる。アマチュアはもちろん、中にはプロらしき人も、ひっきりなしにこの桜を撮りにきていた。

 どんな記事になり、どんなキャプションがつくのか知らないけれど、みんな、私と同じく、イメージに引きずられて撮りにきて、同じプロセスをたどり、この桜の前にたどり着いたんだろうね。

憂き世を忘れて、心を一つに。

 で、皆がこの桜を撮り、写真が何らかの形で人目に触れることとなり、デフォルメされたイメージが毎年拡大再生産されていくのだ。

 ま、それもよか。

 春だから。

 それにしても、桜には、なにか一時的に憂き世を忘れさせる陶酔があるな。

 そして、この東京に咲くソメイヨシノも、福島に咲くソメイヨシノも、岩手や宮城や茨城のそれも、本当の意味で「みな同じ」である。みな「本人」なのだ。

 桜もひとつ、日本もひとつ。

 ともに災害と闘おう。

 って、少々強引な結論なんだが。

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