F1ピットストップBACK NUMBER
レース前は合格で、レース後に失格!?
可夢偉の入賞が取り消された謎。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/04/06 10:30
「ポイントは失いましたが、週末の内容としては、去年の開幕戦とはえらい違いで、成長を感じてもらえたと思います」(可夢偉の公式ブログより)。失格理由に関してまったく罪の無い可夢偉だが、ポジティブに次戦に備えているところが頼もしい!!
2001年以来、開幕戦で2台そろって久々の入賞を果たしたザウバー。
トップ10内からスタートした小林可夢偉は1つ前のポジションからスタートしたフェリペ・マッサ(フェラーリ)を上回る8位。チームメートのセルジオ・ペレスはただひとり1ストップ作戦を成功させてデビュー戦を7位でチェッカーフラッグを受けた。順調な滑り出しに、レース後のザウバーチームはビール片手に祝福し合うスタッフたちで盛り上がっていた。
ところが、レース終了から約3時間後の午後9時33分。レース審議委員会は、ザウバーの2台をレース結果から除外すると発表した。
理由はFIAが行ったレース後の車検で2台のザウバーのマシンに違反が発覚したからである。指摘された違反は、技術レギュレーション第3条10項1と2だった。
そのレギュレーションの一部を以下に抜粋してみた。
「外部の空気の流れと接触するリアウイング部分は、凹面の断面が100mm未満の曲率半径となってはならない」
リアウイングは空気の流れを利用してダウンフォースを発生させるために、その断面が翼形状をしており、さらに中央部分を湾曲させてウイングの下側の流速を高めて車体を地面に押しつける力を発生させている。レギュレーションではその湾曲率を半径100mm以下にならないように定めていたのだが、ザウバーの2台のリアウイングは半径100mm以下だった(より湾曲した形状をしていた)。
処分直後は「車検を通過したのになぜ?」と悩んだ可夢偉。
スポーツにはルールがあり、ルールに則っていなければペナルティを科せられるのは当然である。したがって、今回の一件にまったく異論はないのだが、疑問を感じた部分があったことも確かである。
それは「どうしてレースが終わるまで違反がわからなかったのか」という点である。
失格処分を受けた直後、小林可夢偉も自身のブログで次のように語っている。
「木曜日の車検で通常通り通過した車で、リア(車の後方部分)の部分は車検時のそのままだけど、なぜレース後に???」