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レース前は合格で、レース後に失格!?
可夢偉の入賞が取り消された謎。
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph byHiroshi Kaneko
posted2011/04/06 10:30
「ポイントは失いましたが、週末の内容としては、去年の開幕戦とはえらい違いで、成長を感じてもらえたと思います」(可夢偉の公式ブログより)。失格理由に関してまったく罪の無い可夢偉だが、ポジティブに次戦に備えているところが頼もしい!!
現実問題として……レース後に検査をする方が効率的。
実際には、木曜日の車検でチェックするのは消火器が搭載されているかなどの安全面で、性能面のチェックは金曜日以降となる。
さらに何千点ものパーツで構成されているF1マシンを金曜日以降に1台1台すべての項目にわたってチェックすることは非現実的なことでもある(技術レギュレーションは第20条まであり、さらにそれぞれが5~6項目に細分化されていて、1台まるごと検査するには100カ所以上をチェックしなければならない)。
さらにマシンはセッションごとにパーツを交換するし、パルクフェルメ状態(検査のためマシンが隔離状態にされること。以後、FIAの許可なしに車体に変更を加えることができない)となる予選後も、例えばレース中の接触などによってパーツを交換することもあるので、入賞したマシンをレース後に検査するというのはもっとも効率的なのである。
ザウバーのリアウイングは一度もチェックを受けずにレースへ!?
また、グランプリ期間中はセッション時を除いて車検室は解放されており、各チームが自ら車検室へマシンを運んでいって車重や車体の寸法を測る自主車検もある。しかし、そこにはリアウイングの曲率を計る道具は置かれていないため、ザウバーのリアウイングは週末一度もチェックを受けずにレースに出場していた可能性が高いのである。
今回の検査は入賞した10台のマシンがレース後にすべてが受けており、特にザウバーだけが狙い撃ちされたものではない。
実は今回ザウバーが指摘された部分は、今年追加された新たなレギュレーションだった。
リアウイングはダウンフォースを発生させるパーツとしては重要な役割を果たしており、たとえ数mmでもパフォーマンスには大きな影響を与える。