自転車ツーキニストのTOKYOルート24BACK NUMBER
震災で麻痺した東京の都市機能。
自転車通勤を始める人に5つの提言。
text by
疋田智Satoshi Hikita
photograph bySatoshi Hikita
posted2011/03/19 08:03
自転車通勤のここに気をつけて。
私は決して、こんな機に乗じて「自転車通勤を」なんてことをすすめたいわけじゃない。しかし、災害時に自転車というものは確かにありなのだ。
安くても構わない。たとえば会社なんかが、折りたたみ自転車を数台、ビルに常備しておくだけでも、話は変わるだろう。
深夜の帰宅行軍のひとりにならずにすむというだけじゃない。その一人が自転車に乗るだけで、その人が本来頼っていたかもしれないクルマが一台減る。「迎えのクルマ」も、と考えると往復の二台分が削減できる。単純な話、バスのシートだって一つ空く。
本人がスムーズに帰れるだけじゃなく、他者のスムーズさも増すのだ。都市は、今回を契機に、いよいよ自転車の可能性について考えるべきであろう。
ただし、自転車を活用するに際して守っていただきたいことがいくつかある。
●左側通行の厳守
●信号を守る(何を当たり前を、というなかれ)
●夜間無灯火の厳禁
●基本は車道通行、歩道上は必ず徐行(歩行者にドケドケとばかりにベルを鳴らすのなんてのは論外)
●飲酒運転はしないこと
の5項目である。
鉄道の不全で、自転車通勤を選ぶ人が俄然増える中、これを守らなければ、都市交通はカオスとなってしまう。特に「左側通行」。これを読んだアナタも、周囲の人にも伝えていただきたい。
これから自転車に関わろうとするならば、是非よろしく。
「お金さえ払えば何とかなる」という都市生活の虚構。
それにしても「帰宅難民」だ。
前々から、雑誌などの見出しになり、いざというときには、数十万人もの帰宅難民が出るなんてこと、アタマのどこかでは知っていたはずなのに、まさか本当にそういう時がくるとは思わなかった。
これは多くの人の実感ではあるまいか。
たとえば、この東京に住んでいると、大抵のことは何とかなる。つまり、何が起きていようと、まあ、最悪、お金さえ払えば、何とかなるのではないかという意識だ。
ところが、今回、どうにもならなかった。
まずは電話が通じない。タクシーもバスも動かない。電車も「本日中の復旧の目処はゼロ」。雑誌やスポーツ紙などによると、ディスカウントスーパーの自転車は即座に売り切れ。つまり、どんなに札びらを切ろうと、どうしようと、家に帰る方策は「歩いて帰る」しかなかったのだ。
それはお金持ちであろうと貧乏人であろうと、平等だった。ちょっと考えてみれば「当たり前」とはいうものの、その事実に私は少々、驚いていた。
ヘンな言い方だが、災害は、人間というものをいったんリセットし、すべてのものを「自然の前の平等」に変える。天変地異というものには、良かれ悪しかれそういう部分がある。
しかし、最後にこれだけは言わねばならぬ。
しかし、冒頭でも述べた通り、こんな東京、ぜんぜん平和だ。なんともない。計画停電なんて、どんとこい、だ。
今回はそんなレベルの話じゃない。
頑張れ、東北諸県の人々。
頑張ろう、日本。
手を取り合おう、みんなと。
与党も野党も地方も都会もない。
闘おう、災害と。