オリンピックへの道BACK NUMBER
世代交代が進まない日本ジャンプ陣。
お家芸復活のために必要なのは?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAFLO
posted2011/03/16 10:30
初代表で6位入賞した14歳の高梨沙羅。「こんな濃い霧の中で飛んだのは初めて。1回目は失敗でした」 2014年のソチ五輪で正式採用される最有力候補の女子ジャンプ、今後の成長に期待
40歳前後のベテラン選手を越える若手が現れない……。
また、トップジャンパーは、少々の追い風でも飛距離を出してくるのに、日本の選手は風に影響されやすい。
今大会が行なわれたジャンプ台は、助走路の斜度の関係から、踏み切りのタイミングをとりづらいと言われ、実際、日本勢は練習から苦しんだ。
こうした技術面で立ち遅れていることをもう一度見つめるべきではないか。
なによりも、日本ジャンプ陣が立ち止まっていることを示すのは、新たな選手の台頭がないことだ。今も日本ジャンプ界を牽引するのは、'90年代前半から日本の第一人者である38歳の葛西紀明である。また、今回の世界選手権代表には選ばれなかったが、長野五輪団体金メダル組の40歳の岡部孝信、35歳の船木和喜、世界選手権に3度出ている39歳の東輝らは国内の大会では上位に入る力を持つ。
彼らベテラン選手が今日まで活躍していることは十分敬意に値するが、見方を変えれば、彼らを越える選手がいつになっても出てこない証明でもある。
「どん欲な気持ちがないように感じる」と原田コーチは危惧する。
さらに、こんな指摘もある。
長野五輪団体金メダルをはじめ、長く第一人者として活躍し、今はコーチを務める原田雅彦氏は、以前から言い続けてきた。
「覇気がないというのか、もっと上に行きたいという気持ちが弱いのではないでしょうか。今のポジションで満足しているというか。どん欲な気持ちがないように感じます」
例えば葛西は、納得のいかないジャンプのあとは、露骨に機嫌が悪いことも珍しくないし、怒りを爆発させることもある。それは向上心や負けず嫌いを表してもいる。若い選手には見られない態度だ。
ジャンプの基盤である北海道で、支援する企業が減少し、競技を続ける環境を得られず、学生のうちに引退を余儀なくされる選手が珍しくない。
それを踏まえた上で、どのように技術面で追いついていくのか。若い選手をメンタル面も含めどう育てるか。ヘッドコーチ不在という指導体制を早急に整え、ひとつひとつ解決していくしかない。