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<ベルマーレの試練と再挑戦> “湘南の暴れん坊”が生きる道。 

text by

戸塚啓

戸塚啓Kei Totsuka

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photograph byToshiya Kondo

posted2011/03/02 06:01

<ベルマーレの試練と再挑戦> “湘南の暴れん坊”が生きる道。<Number Web> photograph by Toshiya Kondo

フジタの撤退でかつてと練習場は変わったが、河川敷でのトレーニング風景は昔も今も同じ

反町は「ミスを恐れるな」と強調してきたが……。

「10月くらいかな、レイソルのネルシーニョ監督と会ったときに聞かれたんだ。昇格してから獲った選手が、何人ぐらい試合に出てるんだ? って。ひとりかなと答えたら、それじゃあ厳しいだろうと言われたよ」

 フロントが現場任せだったわけではない。反町の意向と人件費を摺り合わせ、二人のブラジル人を含む5選手を緊急補強している。

 このときチームは、より根本的な課題に直面していた。強化部長の大倉智が振り返る。

「技術で劣るけれど、ミスをしたら食らいついて取り返す。それはJ2からやってきたことで、僕らの生命線と考えていた。『こいつらイヤだな、しつこいな、最後まで走ってくるな』と相手に思わせる。観ているお客さんを感動させる。結果はともかく印象的な戦いはできると思っていただけに、それすらさせてもらえなかったのは予想外だった」

 J2で戦っていた'09年から、反町は「ミスを恐れるな」と強調してきた。J1に舞台を変えても、同じメッセージを発信した。

 選手も理解している。ミスをしても取り返せばいいんだ、と。ところが、先取点を許す展開が続いたことで、ミスをしてはいけないという強迫観念がピッチ上に蔓延していく。前半開始15分までに喫した失点は12を数えた。リーグ最多だった。チームをJ1へ導いたタテへの推進力が、失われていった。

選手が明かした、ピッチ上に起こった負の連鎖。

「J1でいきなり完璧にできるなんて、誰も考えていなかったと思う。1点取られても2点取りにいこうという雰囲気を作り出さないといけなかったのに、0-1になるとまずいという感じが拡がってしまって……」

 アジエル不在の中盤を支えた坂本紘司は、ピッチ上に負の連鎖があったことを明かした。'09年のJ2で自己最多の13得点をあげた彼自身も、J1ではすべてPKによる3得点にとどまっている。

「こうやって守らなきゃ、ああやって相手に対応しなきゃという課題に、こだわり過ぎていました。どんどん前線に飛び出していく、相手に嫌がられるプレーができなかった。点を取ることで、僕は昇格に貢献できたのに」

 シーズン前は自分たちを勇気づけていた昨年の財産が、試合を重ねるたびに崩れていく。胸に抱く希望に冷たい確信が忍び寄り、心の耐久力が弱まっていく。11節から降格圏ゾーンが定位置となったチームは、いくつかの不名誉な記録を残してJ1を去った。

【次ページ】 「どのような結果になっても続けてもらいますよ」

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