リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
不振に喘ぐレアルで繰り広げられる、
モウリーニョ対GMの“仁義なき戦い”。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/02/11 08:00
チェルシーの監督時代は、経営陣と選手補強を巡ってたびたび衝突し、結局チームを自分から去ることになったモウリーニョ
モウリーニョの確固たる信念はレアルを変えられるか?
「会長にとっては耳が痛いことでも、必要ならば聞かせる必要がある」とは今週、モウリーニョがイタリアのテレビのインタビューに対して語った言葉だ。
モウリーニョが会長のペレス、そしてバルダーノに対し、一歩も引かない姿勢を見せたのは、現場の意向を尊重することを求めてクラブを追われたデルボスケ(元レアル監督。現スペイン代表監督)とフェルナンド・イエロ(元レアル選手。現スペインサッカー協会スポーツディレクター)以来となる。
デルボスケとイエロが去ってからレアルが“銀河系崩壊”へと突き進んだことを思い出せば、レアルを正しい方向へと導く選択がどういうものであるかは明らかだ。自らをスペシャル・ワンと称すモウリーニョは絶対に自分の信念を曲げず、その信念を貫くための障害となるものを壊し、新たな何かを生み出す。
そしてその行為に多くの賛同が寄せられるように巧みにメディアを利用し、周到に足場を固める。たとえ彼がレアルを去ることになっても、それは“独裁者”による追放であって、自分はクラブを良くするために戦ったということを強く印象付ける。
モウリーニョのサッカーはバルセロナに比べると退屈で、グアルディオラのようにサッカーに革命をもたらすことはない。だが、彼には長きに渡って誰も成し得なかったレアルの改革を成功させることができるだけの資質がある。それを彼は日々、示し続けている。