リーガ・エスパニョーラの愉楽BACK NUMBER
不振に喘ぐレアルで繰り広げられる、
モウリーニョ対GMの“仁義なき戦い”。
text by
中嶋亨Toru Nakajima
photograph byMutsu Kawamori
posted2011/02/11 08:00
チェルシーの監督時代は、経営陣と選手補強を巡ってたびたび衝突し、結局チームを自分から去ることになったモウリーニョ
「逆転は不可能」
1月30日、レアル・マドリーがオサスナに敗れ、首位バルセロナとの勝ち点差が7に広がったことを受け、スペインのメディアはこのような論調を強めている。
昨年11月29日の直接対決でバルセロナが5-0と圧勝したのに加え、22節終了時点の得失点を見ても、バルサの70得点・11失点に対し、レアルは52得点・19失点と、明らかな差がある。“スペシャル・ワン”モウリーニョをもってしても、バルサの安定した強さを上回るチームを作れずにいるという事実が浮き彫りになっている。
そういう苦しい状況に置かれていても、モウリーニョはレアルにポジティブな変化をもたらそうとしている。
それは、GMバルダーノをチームから遠ざけることである。
現場の最高権力者を巡る、GMと監督のつばぜり合い。
フロレンティーノ・ペレス会長の右腕として前回の銀河系時代からチームを仕切ってきたバルダーノは事実上、現場の最高権力者だった。昨季開幕前にはペジェグリーニ監督が必要な戦力と訴えたスナイデル、ロッベンらを独断で放出。スナイデルからは「レアル上層部にはマフィアがいる」と毒づかれた。
監督の意向を無視して選手の獲得や放出を決めるバルダーノとモウリーニョが上手くいくのかという疑問は、モウリーニョの監督就任当時からあったことだったが、二人は表面的には協力体制にあることをアピールしてきた。
しかし、それも長く続かなかった。
昨年末からイグアインの負傷離脱によって“FW不足”を主張したモウリーニョはいち早く強化部に補強を要請。記者会見でも再三、新規FW獲得が急務であることをアピールし、強化部にプレッシャーをかけ続けた。
だが、バルダーノら強化部が動き出したのは冬の移籍マーケットが開く直前で、モウリーニョが獲得を希望していたと言われるポルトガル代表ウーゴ・アウメイダやボスニア代表エディン・ジェコは早々に他クラブに獲得されてしまった。
後手を踏んだことで、本人もレアル復帰を希望したファン・ニステルローイのレンタル移籍も失敗した強化部は、最後の手段としてマンチェスター・シティで戦力外となっていたアデバヨールを獲得した。